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エリック・クラプトン〜愛の告白の失敗と悲劇に取り憑かれた数年間

2016.08.17

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「人生が深刻な下降線をたどっていった時期の始まりだった」

──エリック・クラプトンは自らの1970年の後半をそう語った。

それまでは順調なはずだった。
1969年、名声を得たクリームでの活動を終えたクラプトンは、次にスティーヴ・ウィンウッドらと“スーパーグループ”のブラインド・フェイスを結成してアメリカツアーを行う。長年憧れ続けたブルース発祥の地(とりわけアメリカ南部)への音楽探究は、彼らの前座だったデラニー&ボニーとの出逢いを経て、いよいよ抑えきれないものとなっていく。
そして、本国イギリスで得た名声を捨て去るかのように、活動拠点をアメリカに移したクラプトン。1970年5月、新しい面々を迎えて放った初ソロアルバムの後、今度はデレク・アンド・ザ・ドミノスとして発表する曲作りに没頭。

しかし、順風満帆に見えた音楽活動の一方で、親友ジョージ・ハリスンの妻パティ・ボイドへの秘かな想いに長い間苦しんでもいた。それは“報われぬ愛”だと知りながらも、クラプトンの心にはいつも彼女がいた。

「彼女が、僕たちの状況を説明する歌詞がたくさん出てくるアルバムを聴けば、愛の叫びに負けて遂にジョージを捨て、自分と一緒になるんだって確信していた」

こうしてパティへの愛は、同年秋にリリースした不朽の名作『Layla and Other Assorted Love Songs』となって告白されることなるが、クラプトンの一途な想いは叶うことはなかった。

「それからしばらく一緒に暮らそうとやみくもに説得し続けたが、成果はなかった。ある日、必死の訴えが無駄に終わった後に『ジョージを捨てなければヘロインを常用する』と言った。彼女が悲しそうに微笑んだ時、ゲームは終わったと思った」

同年9月には、ジミ・ヘンドリックスがドラッグが原因でこの世を去った。同じギタリストとして、ミュージシャンとして、尊敬し合い交友もあったジミの死は、クラプトンに打撃を与えた。
さらに私生児だった自分を育ててくれた祖父の死にも直面して、精神的な支えを次々と失っていく。

こうした状況の中、クラプトンは次第にドラッグやアルコールに深く溺れるようになり、現実から孤立してしまう。その影響はデレク・アンド・ザ・ドミノスの2ndアルバム制作中に最悪なものとなった。仕事がまったく手につかず、メンバー間には敵意さえ芽生え、大喧嘩の後、1971年4月に解散。
また、同年10月には『Layla and Other Assorted Love Songs』の録音で親交を深めた、「持ったことはないが持ちたいと思っていた音楽的兄弟のようだった」オールマン・ブラザーズ・バンドのデュアン・オールマンが、オートバイで事故死。

薬物や酒だけを友に、無の世界をさまよっていたクラプトンにとって、1970年後半~1973年は完全に時が止まった状態だったに違いない。この頃のステージでサングラスを掛けているのは、ドラッグのせいで焦点の合わない視線を隠すためだったと言われているが、彼の目の前には暗闇しかなく、ロック界の悲劇的な伝説の“次なる犠牲者”となっても何の驚きもなかった。

しかし、仲間たちや周囲の献身的な手助けもあり、治療に専念することを決意したクラプトンは、1974年に音楽シーンへ奇跡的な復帰を遂げることになり、壮絶な日々から生き残った。本人はこの時期のことを自叙伝の中で、「ロスト・イヤーズ(失われた数年間)」として赤裸々に綴っている。


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デレク・アンド・ザ・ドミノス
『Layla and Other Assorted Love Songs』
1970

名声を捨て去るかのように
そのきっかけはクリーム時代に、ザ・バンドのデビューアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』を聴いた時から始まる。「あまりの素晴らしさにその場に立ち尽くしてしまった」とまでクラプトンに衝撃を与え、自分がやっている音楽に恥ずかしささえ覚えたという。また、ブラインド・フェイス解散後には、デラニー&ボニーのツアーにサイドメンバーの一人として同行している。アメリカ南部の風景がクラプトンにとっての約束の地だった。

ロック界の悲劇的な伝説
27歳で死ぬこと。ロバート・ジョンソンから始まったブルースマンの呪い。ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソンなど。その後のカート・コバーンやエイミー・ワインハウスも同様。当時はクラプトンやキース・リチャーズが次なる犠牲者と言われていた。

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エリック・クラプトン自伝

※当記事は2014年2月15日に「失われた数年間」と題して初回公開されました。

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