「彼らがいなかったら今の私はいなかった。そんなプロコル・ハルムと共演できるなんてね。神様はいたずらだね」
松任谷由実とプロコル・ハルムのコラボレーションツアー「Back to the Beginning」は、2012年11月28日のパシフィコ横浜、国立大ホールからスタートした。
ユーミンがプロコル・ハルムから影響を受けているのはファンの間ではよく知られていることだったが、このツアーでユーミンは改めてその影響力の大きさを表明した。
荒井(松任谷)由実が東京の八王子で生まれたのは1954年1月19日。実家の荒井呉服店は、空襲で焼け野原となった八王子でいち早く再建した店の一つで、寮もついており、店では大勢の人たちが働いていた。店の常連は主に米兵や娼婦で、ユーミンは様々な人種や大人の恋愛を見ながら幼少期を送った。
そんなユーミンが最初に音楽で衝撃を受けたのは1966年。小学校を卒業して立教女学院に入学したユーミンは、教会で聴いたパイプオルガンの音楽に衝撃を受けるのだった。
「運命の瞬間。(バッハの)トッカータとフーガニ短調だったんですけど。言葉にできない、電流に打たれたような…」(NHK特番「松任谷由実 デビュー40周年はてない夢の旅」より)
その一方でユーミンは海外のポップスやロックに興味を持ち始め、米軍基地に足を運んで、レコードを安く買い漁っていた。そんな日々の中で出会ったのが、バッハを彷彿とさせるオルガンから始まる、プロコル・ハルムが1967年にリリースした大ヒット曲の「青い影」だった。
プロコル・ハルムがイギリスのエセックス州で結成されたのは1967年の4月。バンドの中心人物、ゲイリー・ブルッカーがそれまで組んでいたバンド、パラマウンツは、ミック・ジャガーが最高のR&Bバンドだと称賛するほどの実力を持っていた。
ところがなかなか人気が出ず、シングルを6枚残してパラマウンツは解散してしまう。新たにバンドメンバーを探さなければならなくなったゲイリーだが、その矢先に紹介されたのが詩人のキース・リードだった。キースの詩に感銘を受けたゲイリーは、その詩に合う音楽を作りたいと思った。
新たにメンバーを集め、演奏者5人に詩人1人という変則バンドでスタートしたプロコル・ハルムは、ゲイリーが当時興味を持っていたクラシックをロックに取り入れるという方向性で曲を作り始めた。
そこにキーボードで音楽学校出身のマシュー・フィッシャーがアイデアを出して、デビュー・シングルとなる「青い影」が生まれた。
1967年5月12日にリリースされた「青い影」は、わずか2週間で38万枚を売り上げて全英1位を獲得した。全米では5位に入り、アメリカほか世界各地でもヒットした。ジョン・レノンは「人生でベスト3に入る曲」としてこの曲を称賛している。
ユーミンが好きだった2つの音楽は教会のオルガンとロック、一見するとかけ離れているようにも思えたが、プロコル・ハルムはそれを見事に融合させてみせた。
様々なジャンルを取り入れることが出来るロック。ユーミンはその懐の深さを「青い影」から感じとったという。また、それまでロック=ギターというイメージを抱いていたユーミンだが、「青い影」によって鍵盤楽器でもロックは出来るのだと知り、作曲家の道を進み始めた。
「青い影」はユーミンに曲作りのきっかけを与えただけでなく、初期の代表作「ひこうき雲」をはじめとするいくつかの曲で、サウンド面でも影響を与えている。
2012年にはプロコル・ハルムとツアーで回っただけでなく、一緒にロンドンで「青い影」のレコーディングも実現させており、ツアーを発表した際には以下のコメントを寄せていた。
「青い影」を聴かなかったら、今の私はなかった。9月にロンドンで彼等とリハーサルをして、改めて強くそう思いました。
彼等の演奏で「ひこうき雲」や「翳りゆく部屋」を歌ってみて、曲を作った時に私の頭の中で鳴っていた“音”に再会した気がしました。
そして、11月、彼等と共演します。プロコルハルムと私の曲を歌う…。
長い時間を経て、突然叶った私の夢。おそらくこれが最初で最後です。今からワクワクしています。
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プロコル・ハルム(青い影)

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