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BLUESの旅路⑦〜サニー・ボーイ・ウィリアムソンII/ジミー・リードほか

2017.03.29

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「TAP the COLOR」連載第179回

ブルース(正確にはブルーズ)を聴いたり目の前の演奏に接したりすることは、言うまでもなく一つの体験であると同時に、それは時と場所を巡る旅でもある。スタート地点はミシシッピ川、綿花畑、ハイウェイ61……といったところだろうか。長い旅路では様々な人生、苦悩、歓喜といった風景を見ることになる。旅人たちはそれを決して忘れることはできない。

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5852517040_f813c4603d_o サニー・ボーイ・ウィリアムソンII『Down and Out Blues』(1959)
ブルース・ハーピスト、サニー・ボーイ2世ことライス・ミラーの1955〜58年録音を集めたアルバム。マディ・ウォーターズ・バンドを従えた冒頭の「Don’t Stary Me to Talkin’」から衝撃だ。20年代から活動を始め、30年代にはロバート・ジョンソンやエルモア・ジェイムズらと南部一帯を回ったこともある。40年代には人気ラジオ番組「キング・ビスケット・フラワー・タイム」にレギュラー出演して知名度が上昇。トランペットに録音を残した後、シカゴのチェッカーと契約。本作が生まれた。なお、ジャケ写の強烈な放浪者はサニー・ボーイ本人ではない。


Jimmy-Reed-Im-Jimmy-Reed ジミー・リード『I’m Jimmy Reed』(1958)
スタジオに必ずヨレヨレに酔っ払って登場したというジミー・リードの酔いどれアルバム。1953〜58年録音集。ストーンズもカバーした「Honest I Do」などヒット曲多数。ルーズでゆるいブルーズ、気だるいヴォーカルといった独自のスタイルは病みつきになること必至。ジミーは53〜64年までの間、ロックンロール旋風に吹き飛ばされることなく、14曲をR&Bチャートにランクインさせた。B.B.もマディでさえもなし得なかった偉業だ。

c47888b5ea8a42ccc249c7c6c54ff43a ロバート・クレイ『Strong Persuader』(1986)
誰もブルーズなど聴かなくなっていた1980年代。二人の男たちがブルーズを救って新世代の聴衆を獲得する。一人がスティーヴィー・レイ・ヴォーン、そしてもう一人がロバート・クレイだ。ストラトキャスターによる洗練されたギター・プレイと洒落たヴォーカルで「Smoking Gun」のクロスオーバー・ヒットを飛ばしたのが本作。高校のパーティにやって来たアルバート・コリンズに衝撃を受けて、一度も耳にしたことがなかったブルーズに取り憑かれたという。

eric-clapton-from-the-cradle-vinyl-lp-26350981-rprw45735(2) エリック・クラプトン『From the Cradle』(1994)
まさかの特大ベストセラーになったアンプラグド後に発売されたクラプトン初のブルーズ・アルバム。こちらも何と全米1位を獲得。300万枚以上を売ってしまった。クラプトンが愛したブルーズのカバーで構成。日本でも本作のヒットでブルーズの魅力に取り憑かれた人も少なくない。クラプトンはこの後、ロバート・ジョンソンのカバー・アルバムやB.B.キングとの共演盤など、70〜80年代には決してできなかったブルーズ・エヴァンジェリスト活動を極めていった。

*参考/『ブルースCDガイド・ブック2.0』(小出斉著/ブルース・インターアクションズ)、『ブルースの世界オフィシャル・ガイド』(ブルース&ソウル・レコーズ責任編集/ブルース・インターアクションズ)

(『THE BLUES』シリーズはこちらでお読みください)
フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』(Feel Like Going Home/マーティン・スコセッシ監督)
ソウル・オブ・マン』(The Soul Of A Man/ヴィム・ヴェンダーズ監督)
『ロード・トゥ・メンフィス』(The Road To Memphis/リチャード・ピアース監督)
『デビルズ・ファイヤー』(Warming By The Devil’s Fire/チャールズ・バーネット監督)
『ゴッドファーザー&サン』(The Godfathers And Sons/マーク・レヴィン監督)
『レッド、ホワイト&ブルース』(Red, White & Blues/マイク・フィギス監督)
『ピアノ・ブルース』(Piano Blues/クリント・イーストウッド監督)

【執筆者の紹介】
■中野充浩のプロフィール
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http://www.tapthepop.net/author/nakano
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