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「TAP the COLOR」連載第246回〜BLACK〜
1990年代以降、ビルボードのアルバムチャートは売り上げに基づいた集計方法に変わった。さらにゼロ年代に入るとネット配信が普及してCDやアルバムが売れなくなった。その影響もあって現在のチャートはほぼ毎週のようにナンバーワンが入れ替わり、すぐにトップ10圏外へランクダウンしてしまう(その代わりに年に数枚だけビッグヒットが生まれる)。だが70〜80年代はナンバーワンになること自体が困難で、言い換えればそれらは「時代のサウンドトラック」として確かに機能していた。3月にはどんなアルバムがナンバーワンになったのだろう?
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レイ・チャールズ『Genius Loves Company』(2004)
2004年6月10日に73歳で亡くなったレイ・チャールズの遺作(1週1位)は、多くのゲストとのデュエット作。レイと歌うのはノラ・ジョーンズ、ジェームス・テイラー、エルトン・ジョン、ナタリー・コール、ボニー・レイット、マイケル・マクドナルド、ウィリー・ネルソン、B.B.キング、グラディス・ナイト、ジョニー・マティス、ヴァン・モリソンら。音楽とは素晴らしい。そう感じさせてくれる至福の54分間。
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エリック・クラプトン『Unplugged』(1992)
アンプラグド・シリーズの中で最大の成功を収めたのがクラプトンのこの1枚(3週連続1位)。全米だけで1000万枚以上をセールス。自身のルーツであるロバート・ジョンソンやマディ・ウォーターズらのブルーズのカバーのほか、「Layla」の渋いヴァージョンや大ヒット「Tears in Heaven」などが聴ける。従来のファンだけでなく、クラプトンを知らなかった世代にもこれを機に浸透し、次作のブルーズ・アルバム『From the Cradle』は全米1位の快挙となった。
2PAC『All Eyez on Me』(1996)
ヒップホップの歴史上「最大の悲劇」と言われる東西抗争に巻き込まれて犠牲者となった西海岸のレジェンド、トゥパック(デス・ロウ所属)。1996年9月13日に他界、まだ25歳の若さだった。翌年3月9日には東海岸のレジェンド、ノートリアスB.I.G.(バッド・ボーイ所属)も銃弾に倒れてしまう(こちらも24歳)。60〜70年代のオールドロック・ファンには興味がない話かもしれないが、ヒップホップを聴かずして(知らずして)、90年代もゼロ年代もそして現在の音楽シーンも語ることはできない。それくらい大きな存在になった。2枚組の本作(2週1位)は全米だけで1000万枚以上、ヒップホップ史上最大級のセールスを誇る。
マライア・キャリー『Mariah Carey』(1990)
90年代後半以降は、音楽性そのものよりセレブリティの代名詞的存在になってしまったマライアだが、90年代前半の頃はこのアルバムジャケットの写真のように、まだまだ初々しさが残る歌姫のイメージが強かった。本作はそんな彼女の、今や伝説とでも言うべきデビュー作(11週連続1位)。「Vision of Love」「Love Takes Time」「Someday」「I Don’t Wanna Cry」と4曲ものナンバーワン・シングルを収録。
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