★ダウンロード/ストリーミング時代の色彩別アルバムガイド
「TAP the COLOR」連載第256回〜BROWN〜
1990年代以降、ビルボードのアルバムチャートは売り上げに基づいた集計方法に変わった。さらにゼロ年代に入るとネット配信が普及してCDやアルバムが売れなくなった。その影響もあって現在のチャートはほぼ毎週のようにナンバーワンが入れ替わり、すぐにトップ10圏外へランクダウンしてしまう(その代わりに年に数枚だけビッグヒットが生まれる)。だが70〜80年代はナンバーワンになること自体が困難で、言い換えればそれらは「時代のサウンドトラック」として確かに機能していた。5月にはどんなアルバムがナンバーワンになったのだろう?
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ママス&パパス『If You Can Believe Your Eyes and Ears』(1966)
NYのグリニッチ・ヴィレッジのフォークシーンで活動していたジョン・フィリップスやキャス・エリオットらによる男女4人組のデビュー作(1週1位)。同時代のヒッピー/フラワーチルドレンに支持されたフォーク・ロック・サウンドで、名曲「California Dreamin’」「Monday, Monday」などを収録。ダンヒルのルー・アドラーのプロデュース。この後、激動の時代の流れと消えゆくカリフォルニア幻想に合わせるかのように4人は訣別。ミッシェル以外は亡くなってしまった。
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カリフォルニア・ドリーミング〜“夢の終わり”を象徴していた隠れた名作
CSN&Y『Déjà Vu』(1970)
1週1位
クロスビー、スティルス&ナッシュ『Crosby, Stills & Nash』(1969)
ウッドストック、ヒッピー、カウンターカルチャー……あの激動の時代と世代の象徴となっている彼ら。デヴィッド・クロスビー、スティーヴン・スティルス、グラハム・ナッシュ、そして後に加わったニール・ヤング。本作はスーパーグループのセカンド(1週1位)。アコースティック・サウンドとヴォーカル・ハーモニーに耳を傾ければ、当時を知らない人でもあの頃の風景や空気を感じることができるだろう。日本でも例えば70年代のフォーク歌手たちに多大な影響を与えた。「Woodstock」「Teach Your Children」「Helpless」などを収録。
ブラック・クロウズ『The Southern Harmony and Musical Companion』(1992)
90年のデビュー作『Shake Your Money Maker』(全米4位)に続くセカンド(1週1位)。カントリーやブルーズを糧にするルーツ・ロックのバンドは日本ではどうしても人気も知名度が低くなる傾向があるが、高速を走りながら流れる自然や田舎の風景を目にしながら聴くと、意外とはまるものだ。日本では「どこで聴くか」がこの種のバンドの楽しみ方となる。80年代後半、彼らの前にジョージア・サテライツというバンドがあったことを思い出す。
USAフォー・アフリカ『We Are the World』(1985)
MTVが全盛を誇った80年代は、音楽を通じたチャリティも盛んに行われた。本作はアフリカの飢餓救済を目的にハリー・ベラフォンテが提唱。マイケル・ジャクソンやライオネル・リッチーが曲を書き、ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーン、レイ・チャールズなどそうそうたる顔ぶれが集まってレコーディングされる。大ヒットした「We Are the World」だけが語り草となるが、アルバム(3週連続1位)にはプリンスの曲も収録。なお、当初のプランではマイケルとプリンスがデュエットする話もあったようだ。実現してほしかった。
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