1967年6月16日から18日にかけて、カリフォルニア州サンフランシスコ市の南に位置する港町のモンタレーで、ロック史における伝説となったモンタレー・ポップ・フェスティバルが開かれた。
その後のウッド・ストック(69年)、ワイト島(70年)など大規模ロック・フェスの先がけとなったという意味でも、歴史に残るこの野外フェスに出演したのはグレイトフル・デッドやジェファーソン・エアプレインなどの地元サンフランシスコ勢と、ザ・バーズ、バッファロー・スプリングフィールド、ママス&パパスといったロスアンゼルス勢、そしてイギリスからはザ・フー、ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス、エリック・バードン&ジ・アニマルズ、東海岸のニューヨークからもサイモンとガーファンクル、ローラ・ニーロなど30組以上が参加した。
「Music, Love & Flowers」をテーマに開催されたフェスは新しい時代の到来を告げていたロックとフォーク・ロックが中心だったが、他にもフォークやソウル、ブルース、民族音楽のミュージシャンも出演して、その多様性は当時の音楽文化を反映するものとなった。
当時のヒッピー・ムーヴメントを象徴するようなサンフランシスコのバンド、ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー のヴォーカリストとして出演したジャニス・ジョップリンが、信じられないようなエネルギッシュなライブ・パフォーマンスで観衆にセンセーションを巻き起こしたのは、2日目午後のステージだった。
そのパフォーマンスがいかに衝撃的だったかは、最終日の夜に予定されていた大物ミュージシャンが共演するスーパースター・ナイトに、急遽出演することが決まったことからもわかる。
披露したのは「Down On Me」、「Combination Of The Two」、「Harry」、「Road Bloc」、「Ball And Chain」の5曲だが、最後の「Ball And Chain」が圧巻だった。
そしてスーパースター・ナイトにおけるジャニスの「Ball And Chain」は映像と音が記録されて永遠のものとなり、ドキュメンタリー映画『モンタレー・ポップ』として、その後も音楽を聴くだけでなくパフォーマンスを目にすることができる。
そこではフェスの主催者でもあったママス&パパスのキャス・エリオットが、期待に違わぬ神がかりのような熱唱を披露するジャニスに、観客席で口を開けたまま聴き入って、思わず”Wow, that’s really heavy”とつぶやくシーンが出て来る。
ジャニスはこの2日連続のライブ・パフォーマンスをステップ・ボードにして、メジャーのCBSとレコード契約を結び、一気にスターダムを駆け上っていく。
それはサンフランシスコからの旅立ちをも意味したが、それから3年後にこの世からの旅立ってしまうことをも含んでいたのかもしれない。
(注)本コラムは2017年6月16日に公開されました。
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