1962年にデビューして以来、フォークの枠にとどまらずロックやポップスにも多大な影響を与えてきた詩人、ボブ・ディラン。
現在活躍されているミュージシャンの方々に、ボブ・ディランの好きな楽曲を1曲あげていただき、その曲に対する思い入れを語ってもらいました。
アンケート企画 参加ミュージシャン(登場順)
おおはた雄一/前野健太/リクオ
かみぬまゆうたろう/中村まり
渡辺圭一/山部“YAMAZEN”善次郎
酒い♨大明(オハヨー・マウンテン・ロード)
直枝政広(カーネーション)
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>> BOB DYLAN ボブ・ディラン特集は、こちらからご覧いただけます。
直枝政広(カーネーション)
「Watching The River Flow」
『Bob Dylan's Greatest Hits Volume II』収録
ボブ・ディラン「川の流れを見つめて」
中学の時に映画『バングラデシュ・コンサート』を観てボブ・ディランに興味を持った。
同時期にレオン・ラッセルやジェシ・エド・デイヴィスらと作ったこのシングル曲が、ほぼリアル・タイムでそんな気分にフィットした。
地味だけどワイルドに弾むこのサウンドを夢見て、生ギターだけでよれよれのロックン・ロールを作って友人と録音した。そんな体験が原点にある。
あれから40年、今でもぼくはボブ・ディランのことを考え続けている。
直枝政広(カーネーション) Profile
1959年生まれ。1983年カーネーション結成。1984年に直枝政太郎名義でオムニバス『陽気な若き博物館員たち』(水族館/徳間ジャパン)でソロ・デビュー。同年、カーネーションがシングル「夜の煙突」(ナゴム・レコード)でレコード・デビュー。以後、カーネーションは数度のメンバーチェンジを経ながら数多くの傑作アルバムをリリース。2000年には直枝政広としての初ソロ・アルバム『HOPKINS CREEK』を発表。同時に鈴井貴之初監督作品『man-hole』のサウンドトラックも手がける。2007年に初の著作となる『宇宙の柳、たましいの下着』を上梓。2012年には、カーネーションの最新作となるアルバム『SWEET ROMANCE』を発表した。バンドと並行し、ソロ・ライヴでの活動や執筆等、精力的に活動中。
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V.A. カーネーション トリビュート・アルバム『なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?』
(P-VINE RECORDS)
直枝政太郎『東京ゴジラ』
(ウルトラ・ヴァイヴ)*ナゴムレコード再始動第2弾
酒い♨大明(オハヨー・マウンテン・ロード)
「Not Dark Yet」
『Time Out Of Mind』収録
『Time Out Of Mind』(1997年)以降のボブ・ディランは、出すアルバム出すアルバム全てが傑作だ。
その『Time Out Of Mind』からの一曲を選ばせてもらった。
ダニエル・ラノワが創り出す幽玄な音響の中で、56歳のボブはまるで70過ぎの老人のように歌う。
ボブは全ての魔法や損失を見て来たかのようだし、全ての大切な愛や大切な物を失ったかのようだ。
美しい物は全て、その背後になんらかの苦痛を宿している。
身につまされる歌詞が、良い歌詞だと俺は思う。
だからこの曲が大好きだ。
未来は明るい…そんな言葉はありきたりだ。
まだ暗くはない。でもじきにそうなる。
なんて凄い曲なんだろう!
かつてボブは「誰もブラインド・ウィリー・マクテルのようにブルースは歌えない」と歌ったが、この曲でこのアルバムで、ボブはあらゆる伝説的ブルース・ミュージシャンを凌駕した。
ボブ・ディランが21世紀に向けて放った、20世紀最後の最高のブルース…。
と、ついついアツく語ってしまうほど大好きなんです~(笑)。
今回の来日公演では演奏してくれるかな?
去年のUS、ユーロツアーはセットリストがかなり固定されていて驚いたけど、今回はどうなるかな。また日替わりのセットリストで我々を楽しませて欲しいですね!
たのむぜ!ボブ爺さん!
酒い♨大明(オハヨー・マウンテン・ロード) Profile
かつてBREAKfASTやEXCLAIMといったハードコアバンドで世界中のごく一部(笑)に衝撃を与える。
その後フォークシンガーに転向し、特に誰にも衝撃を与えることもなく(塩)オハヨー・マウンテン・ロード(愛称:オハマン)で活躍中。
オハヨー・マウンテン・ロードFacebookページ
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オハヨー・マウンテン・ロードの音源は、Ototoy にて購入可能です。
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『Ohayo Mountain Road』
(POWER ELEPHANT!)
山部“YAMAZEN”善次郎
「One More Cup of Coffee(Valley Below)」
『Desire』収録
25歳の時。
音楽大国であるイギリスへと。
胸を躍らせ行ったものの入国拒否をされ、ヒースロー空港内の収容施設に閉じ込められた。
中では中近東やアフリカの人間たちが“わけのわからない言葉”を発し、それぞれに何かを訴え、なんとも殺伐とした雰囲気だった。
更に違和感を加えたのが、イスラムのコーランだ。
その不思議な調べに合わせて、中近東の人間が揃って礼拝をしていた。
文化の違いと云えばそれまでだが。
民族の違い、宗教の違い…とにかく妙な余韻を持ち帰った。
それから数ヶ月。
大阪で、とある店のラジオから流れてきたのが、ボブ・ディランの「コーヒーをもう一杯」だ。
そのオリエンタルな音に、イギリスの収容施設での感触が甦り…そして一気に包まれた。
独特の匂いを持った曲である。
山部“YAMAZEN”善次郎 Profile
1954年、福岡市生まれ。博多在住のミュージシャン。10代半ばからロック.ミュージシャンとして活動をはじめ、数々の伝説を生み、今年還暦を迎える現在もその歌声は衰えることなく、精力的なステージ・パフォーマンスを展開している。2013年にはアルバム『少しだけ優しく』をリリースした。また油彩画家としても定期的な個展を開く。
official website http://yamazen.webnode.jp/
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『少しだけ優しく』
(BEAT VOX)
渡辺圭一
「Hurricane」
『Desire』収録
車のラジオとか商店街で何気に入った店とかから不意にディランの歌が聴こえてくると、少し儲けた感じがしてしまう。弁当屋でどんなにBGMが薄く鳴ってても、「お、ディランやんか」とにんまりしてしまう。
バンドに目覚めた中高校生の頃はパンク・ムーヴメント全盛でディランは知ってたけど、背伸びして聴いてたくらいで味わい深さを理解するにはまだ早かった。しばらくしてFMからディランの「ハリケーン」が流れて何とも言えない震えがきたのを覚えている。
歌詞の内容なんてこれっぽっちもわからんやったけど、生々しい歌声と迫り来るヴァイオリンが印象的で。曲の持つ熱量がね、ギンギンのロックバンド以上にグイグイ来るのが良かった。無敵感というか何て言うか力が湧くんよね。
8分強もある曲だからラジオでは当然途中までしかかからんのだけど、当時すぐに『欲望』という名のアルバムを買った。冤罪で投獄されたボクサーの実話の歌だとこの時知った。これがプロテストソングを初めて体感した時かもしれないな。とにかくそんな湧き上がる何かを感じる1曲やった。
バイト先の苦手な店長に「今日で辞めさせてください」と言いに行く時や、会社の理不尽で嫌な上司にモノ申す時、彼女や奥さんにカミングアウトするというような時に爆音で「ハリケーン」を聴きながら行くと相当無敵になれる思うんだけどな。
その場が嵐になっても知りませんけど…。
中村まり
「Restless Farewell」
『The Times They Are A-Changin'』収録
ボブ・ディランの曲は「To Ramona」「Don’t Think Twice, It’s All Right」「Buckets Of Rain」など、自分のライヴでもたまにカバーしていますが、「Restless Farewell」は2012年に出た、Lonesome Strings and Mari Nakamuraの『Afterthoughts』というアルバムで録音している曲です。
この曲をミックスしていた頃にベースの松永孝義さんが急逝されたこともあり、ロンサム・ストリングスとレコーディングした特別な情景と共に思い出す曲でもあります。
歌詞の内容も、過去にあった誤解やもつれを回顧しながらも、あっさりとそれらを切り捨ててまっすぐに人生を突き進むことが大事とする、私の思うボブ・ディランの生き様が出ているような気がしました。孤独を感じながらも、同時に人との縁の不思議を感じていた、私の心境にもぴったり寄り添うような歌でした。
中村まり Profile
アメリカン・フォークやカントリー・ブルース、ブルーグラス、オールドタイム・ミュージックなどに影響を受けたサウンドで、英詞のオリジナル曲をアコースティック・ギターにのせて歌うシンガー・ソングライター。弾き語りでのソロライヴをはじめ、ロンサム・ストリングスや数々のアーティストと共演・客演をしながら、フェスティバルや各地でのライヴ活動を行っている。2005年に1stアルバム『Seeds To Grow』、2009年に2ndアルバム『Beneath the Buttermilk Sky』をリリース。2011年、Lonesome Strings & Mari Nakamuraとして共作アルバム『Folklore Session』をリリース。2012年9月、同名義でミニ・アルバム+DVD作品『Afterthoughts』をリリース。
http://www.marinakamura.net/
TAP the NEXT──中村まり
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Lonesome Strings and Mari Nakamura『Afterthoughts』
(MIDI)
『Afterthoughts』
(Mule Records)
かみぬまゆうたろう
「Like A Rolling Stone」
『Highway 61 Revisited』収録
レコードプレーヤーを買い、レコードを買い、当然のようにボブ・ディランを聴いた。
ディランの数あるレコードの中から、かみぬま青年が”最初のボブ・ディラン”として選んだアルバムが『Highway 61 Revisited』でした。
レコードに針を落とし、レコード特有のプチパチ音が鳴りだします。
そして1発!
スネアが鳴った。
その瞬間から僕はディランの虜です。
僕とディランの出会いの曲「Like A Rolling Stone」はとても大事な1曲です。
かみぬまゆうたろう Profile
1988年生まれ。1923年製のマーティンを爪弾きながら、青春や恋愛のワンシーンを切り取りありのままに歌う詩世界、それを彩る情景的な曲とメロディ、聴き手に響く歌をフォーキーにスインギンに奏でる、注目のシンガー・ソングライター。2009年よりライブハウスや路上で、弾き語りでの演奏活動を開始し、翌年、自主制作のCD-R音源『初期のかみぬまゆうたろう』を発表。2011年からは、ギターパンダ、竹原ピストル、奇妙礼太郎らをゲストに迎えた、ツーマンライヴ・シリーズ〈ゆうたろうくんと〇〇さん〉を定期的に開催。また弾き語りソロと平行してバンドによるアプローチも展開し、現在では都内を中心にライヴ本数も年間50本(ストリート含む)を行い、着実に人気を高めている。2014年2月に初のアルバム『かみぬまゆうたろう』をリリースした。
http://kaminumayutaro.jp/
TAP the NEXT──かみぬまゆうたろう
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『かみぬまゆうたろう』
(Galactic)
リクオ
「You're A Big Girl Now」
『Blood On The Tracks』収録
この曲が収録されたアルバム『Blood On The Tracks』は、全編に〈乾いた哀愁〉がただよう、自分にとって最高のブルースアルバムです。歌詞の意味はよくわからないのに、聴いていると情緒が刺激されて、自分の中で風景やストーリーがどんどんひろがってゆく感じ。
「You're A Big Girl Now」はアルバムの中でも特に好きな曲で、聴いていると、心の奥のやわらかい場所がしめつけられる一方で、さらにその奥の深い場所は浄化されてゆくような、そんな不思議な気持ちになります。この曲は自分にとって、〈再生のためのレクイエム〉なんだと思います。
リクオ Profile
京都出身。ソウルフルなヴォーカルと幅広いソングライティング、ニューオーリンズピアノ、R&R、ブルース等に影響を受けたグルーヴィーなピアノスタイルで注目を集める。年間120本を越えるツアーで鍛えられたファンキーなライヴ・パフォーマンスは、世代・ジャンルを越えて熱狂的な支持を集め、〈ローリングピアノマン〉の異名を持つ。2012年4月、29人のアーティストとのコラボ・ライヴ・アルバム『HOBO CONNECTION Vol.1』をリリース。2012年にはウルフルケイスケ、寺岡信芳(元アナーキー)、小宮山純平(元cutman-booche)とロックバンド〈MAGICAL CHAIN CLUB BAND〉を結成し、同年10月にアルバムをリリース。2014年2月、オリジナルアルバムとしては5年半振りのソロ・アルバム『HOBO HOUSE』をリリース。
http://www.rikuo.net/
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『HOBO HOUSE』
(HOME WORK)
前野健太
「Ballad In Plain D」
『Another Side of Bob Dylan』収録
さっき東京に戻ってきて、北陸の短い旅は終わった。
越後湯沢から金沢までの特急「はくたか」で聴いてしっくりきたのは「Dのバラッド」。金沢競馬と二本のライブを終え、帰りの特急「しらさぎ」の中で聴いてしっくりきたのも「Dのバラッド」。私が自分の新しいアルバム『ハッピーランチ』で多用したギターチューニングはドロップD。
雨が降って春が来て、またDylanがこの街に歌いにやって来た。
前野健太 Profile
1979年埼玉県入間市出身のシンガーソングライター。 2007年に自ら立ち上げたレーベル "romance records" よりリリースした『ロマンスカー』にてデビュー以来、2013年12月にリリースされたジム・オルークのプロデュースによる最新作『ハッピーランチ』まで、これまでに5枚のオリジナル・アルバムを発表している。2009年元日に東京・吉祥寺の街中で74分1シーン1カットでゲリラ撮影された、ライブドキュメント映画『ライブテープ』(松江哲明監督)に主演として出演。第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」で作品賞を受賞。同じく松江哲明監督映画『トーキョードリフター』(2012年)でも主演を務めた。フジロックなどフェスやイベントへの出演をはじめ、全国各地をさすらいながら歌い続けている。
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『ハッピーランチ』
(felicity)
おおはた雄一
「Don't Think Twice, It's All Right」
『The Freewheelin'』収録
3番にでてくる「僕は心を捧げたけれど、彼女が欲しがったのは僕の魂だった」
心と魂って違うんだ、と教えてくれたディランの一番好きな歌詞。
ひっかかった、という表現がぴったりの出会い方をした曲です。
この曲を自分でも訳して歌っていますが、
数多くあるいろんな人のバージョン、どれも面白い。
つっけんどんに歌えばそういう歌に、
ささやくように歌えばそういう歌に、
出入り自由の場所みたいに、それぞれの解釈がある。
それだけに、歌う人のキャラクターが強く出る曲だなと思います。
曲の方が偉いんだぞ、って感じがしないとでもいいますか。
それはそのまま、自由人ボブ・ディランの佇まいにも重なってきます。
Don’t Think Twice, It’s All Right. かっこいい。
おおはた雄一 Profile
1975年生まれのシンガー・ソングライター。2004年以来、6枚のアルバムを発表。弾き語りソロや、芳垣安洋(dr)・伊賀航(b)とのトリオ編成など、年間を通して各地をライブ行脚している。坂本美雨とのユニット「おお雨」や、2013年には福岡晃子(チャットモンチー)との新ユニット「くもゆき」の活動も開始。ギタリストとしてもハナレグミ、Superflyなど多くのセッションに参加するなど、ジャンルを超えて活躍中。
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『おおはた雄一、ボブ・ディランを訳して歌う』
(トロピカル)*ライブ会場限定販売