彼の名は浜田ケンジ。
ストレートな言葉をメロディーに乗せて歌ったり喋り倒したり、実に人間味溢れる歌世界、喜怒哀楽に満ちた歌声、時には落語をリズムに乗せて歌ってみたり…その独特でユーモラスな音楽スタイルに触れた人の多くは心を奪われるという。
全国のライブハウスや酒場を歌い周る彼がこの夏(2019年7月17日)弾き語り4thアルバム『HINEMOSU NOTARI』をリリースした!
「春の海 終日(ひねもす)のたり のたりかな」
俳人・与謝蕪村のこの名句“春の海”から引用されたアルバムタイトルにはどんな意味が込められているのだろう?
今回、TAP the POPの独占インタビューに答えていただきながら彼の魅力・新作の聴きどころをたっぷりとご紹介させていただきます。
Q:蕪村が丹後与謝(京都)の海を詠んだともいわれているこの名句をタイトルにした理由を聞かせて下さい。
14歳か15歳ぐらいの時に真島昌利(クロマニヨンズ/元ブルーハーツ)の「空席」という曲の中に“ひねもすのたりとりあえず ブートレッグを聴いている”という歌詞がありまして、“ひねもすのたり”ってなんだか凄く良い響きだなと思ったんですよ。
与謝蕪村からの引用だったことは後から知りました。
それから自分で曲を作るようになってから、いつかこの“ひねもすのたり”というフレーズを使いたいと思い数十年経ったんですが…実際に使った曲は未だに出来てません(笑)
なので今回のアルバムタイトルを考えてる時に“ひねもすのたり”を今ここで使おう!と。
ひねもす(終日、一日中)のたり(のんびりとゆったりと)聴いて欲しいという思いを込めてアルバムタイトルを『ひねもすのたり』にしました。
Q:今回のアルバムでリード曲となった「Friend Ship」は、どんな経緯で出来た楽曲なのですか?
この曲は2012年に制作した会場限定の1stミニアルバム『アタリとハズレ』に収録してた曲なんですよ。
この曲の前半部分の歌詞を書いたのは友達の清水護というやつなんです。
彼の先輩(Friend ShipのMVの主演の方)の親友がお亡くなりになった時に書いた詩(言葉)だと聞きました。
僕はそれを読んだ時にめちゃくちゃ良い詩だなと思ったんです。
「この詩を使って曲を作りたい!」と思って、前半は護が書いた詩、後半は自分の書い詩を繋げて作った曲です。
今回この「Friend Ship」を再録して全国発売したい!と思い新たにレコーディングしました。
僕らに与えられた時間は
借り物の体を引きずりながら平行に進んで行く
いい事 いやな事 忘れたい事 忘れたくない事
悲劇でも喜劇でも青い炎も赤い炎も
風も空も
森も大地も
太陽も雲も
星も宇宙だって
全てが思い出になるその日まで
全ては残酷に平行に進み続ける
Q:この曲の歌詞にはどんな思いが込められているのでしょうか?
今年で40歳になるんですが、言うなれば折り返し地点。
友達が書いた冒頭の部分にもあるように「全てが思い出になるその時まで全ては残酷に平等に進んでいく」まさにそうだなと。
何もしないでも時間は経過してしまう。
それならばその時が来るまでカチカチと命をぶつけ合い、削り合い、重ね合って生きていきたいと思ってます。
初めて人の詩を使って作った曲ということもあって、僕の中では思い入れが深い曲となりました。
Q:アルバムジャケットにも写っているギターについて、出会いのエピソードやどんな楽器なのか?教えて下さい。
僕がメイン楽器として使っているGibsonのSongwriter Deluxe Customです。
このギターは1stアルバムに収録した「Dear」という曲のモデルになった友達がくれたギターです。
音楽でご飯を食べていくことを諦めてしまった友達に書いた曲でして。
音楽の道を諦めて居酒屋をやるっていうので、ある日その居酒屋に呑みに行ったんですよ。
個室に通されたらそこにギターケースが置いてあって「あー!あいつまだギター弾いてるんだ!お店で練習してるんだ!」と思って少し嬉しかったんですよ。
ところが、帰ろうとした時に「ケンジ、このギター持ってってくれ」と。
「いやいや、これはお前が大事にしとるギターだろ!」と言ったんですが「お前が書いたDearって曲に救われたから、ケンジにこのギターを弾いて欲しい、俺が持ってても仕方ないから」と言われたんですよ。
めちゃくちゃ嬉しかったんですが、ちょっと複雑な気持ちというかなんというか。。
飲食の道でやって行くって腹括ったんだなって。
それならばその気持ちを受けとめようと思って…彼のギターを持ち帰りました。
それからずっと使ってるギターですね。
僕、今までアコースティックギターって買った事がないんですよ。
全部貰い物でして。
ラッキーですよね(笑)
しかしそいつからギターを貰った時に「これでいよいよ音楽はやめれなくなったな」と思いました(笑)
このギターは、ずっと大事に使っていきたいと思っています。
Q:そのギターのボディーに貼られている“青いハートの折り紙” にまつわるエピソードを聞かせて下さい。
この青いハートの折り紙は長野県の友達の子供がくれたものなんですよ。
僕がブルーハーツ好きと知ってか知らずか、ある日のライブ前に青いハートの折り紙をくれたんです。
ハートの中には僕へのメッセージが書いてあるんですよ。
メッセージの内容は秘密ですけど(笑)
1年に1回その友達がライブを企画してくれるんです。
なので1年に1回(新しい)青いハートの折り紙をその子供がくれるんですよ。
今年はまだ行けてないので10月ぐらいに長野にライブやりに行こうと思ってます。
1年付けてるとボロボロになってしまうので新しいハートの折り紙が欲しいですね。
でもその子供の気持ちが変わってハートの折り紙をくれなかったらどうしよう?と不安にもなってます(笑)
Q:子供の頃の音楽体験を聞かせて下さい。
1番最初にいい曲だなーと思ったのが保育園から帰って来てテレビをつけたら「西遊記」がやってたんですよ。
そのエンディング曲を聴いて洗濯物を干してるお母さんに「お母さん!この曲は誰?!めちゃくちゃいい曲だね!」って言った事を今でも憶えてます。
ゴダイゴの「ガンダーラ」という曲でした。
その次は小学2年生の時に家でサイモン&ガーファンクルのレコードを見つけて「サウンド・オブ・サイレンス」っていう曲を聴かせて貰って凄く気に入ったんですよ。
それからレコードに針の落とし方を教えて貰ってお風呂上がりに「サウンド・オブ・サイレンス」を聴いてから寝てました。
ゴダイゴの「ガンダーラ」といい、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」といい、切ないメロディーが好きになったのはこの2曲の影響があるんじゃないのかな?と思ってます。
Q:思春期に聴いていた音楽や、影響を受けたアーティストを聞かせて下さい。
小学3年生の時にブルーハーツを聴いてファンにになりました。
3つ上に兄がいるんですが、中学生の時に「何か良いバンドいない?」と聞いたらブランキージェットシティーを勧められました。
聴いたらめちゃくちゃカッコ良くて衝撃を受けましたね。
中学時代はブルーハーツ、真島昌利、ブランキージェットシティー、マッドカプセルマーケッツ、長渕剛さんなどを聴いていたんですが、周りはミスチル、ルナシーなどを聴いていたので全く話が合いませんでした(笑)
Q:楽器(ギター)との出会いにまつわるエピソードなどあれば聞かせて下さい。
最初はブライアンセッツァーに憧れました。
ストレイキャッツの「ロック・ディス・タウン」が弾けるようになったらグレッチを買おう!!と決めてたんですよ。
知り合いの楽器屋さんに行ってグレッチを眺めてたんですよ。
ガラス越しにトランペットを見つめる少年のように(笑)
そしたらある日お店の店主が「そんなに欲しいなら一度弾いてみろよ」と。
でも僕は一度でも弾いてしまったら絶対欲しくなると思って拒否してました。
まだ「ロック・ディス・タウン」も弾けないし。
店主がグレッチのギターをアンプに繋いで、僕の目の前で爆音で鳴らした次の瞬間…購入してました(笑)
一度も試奏せずににギターを買ったのはあれが初めてでした。
というかその店主はギターがめちゃくちゃ上手いんですよ!
しかも子供みたいな人だから、自分ばっかり弾いて僕に全然弾かせてくれないんですよ(笑)
今でも僕の中での1番のギタリストはその楽器屋さんの店主トミチューさんですね。
ちなみに「ロック・ディス・タウン」は未だに弾けません(笑)
Q:音楽以外にも影響を受けたものなどありますか?
本を読むようになってからは村上龍、チャールズブコウスキー、中島らもとか読んでましたね。
今は浅田次郎が好きですね。
「きんぴか」「天切り松 闇がたり」は名作ですね!
あとは落語家の立川志の輔が大好きです!
この前やっとチケットが取れて赤坂に観に行ったんですが、めちゃくちゃ面白かった!
1人で全てをこなす噺家って凄いですよね。
見よう見まねで落語を覚えて、友達の前やツアー先でほんと時々ですが、僕も落語をやらせて貰ってます。
まー、でも、物覚えが悪いので中々落語を覚える事が出来ませんが(笑)
ツアー中も移動の時に落語を聴いて1人でゲラゲラ笑ってます。
側から見たら危ない奴に見えますよね(笑)
Q:今年(いよいよ)40代を迎えるにあたって、これからの目標や、今後の抱負があれば聞かせて下さい。
基本的に歳は気にしてないんですが、時々思うのが僕が子供の頃に感じた40歳ってめちゃくちゃ大人な感じだったんですが、全く大人感が出てない自分が残念でなりません(笑)
周りの友達なんかもっと子供みたいな感じですよ!
僕から見たらいつも呑み歩いてる友達なんて小学2年生みたいな会話してますからね!
男はいつまで経ってもバカでガキだってのはあながち間違ってないんだろうなと(笑)
いくつになってもバカな話をしてゲラゲラ笑い会える友達がいるのは幸せです。
ライブに来てくれる人達、僕の曲を良いと言ってくれる人達、どこの事務所にも属してない僕に協力してくれる人達、そんな人達がいるから僕は歌を唄ってご飯が食べれてる。
その気持ちをいくつになっても忘れたくないですね。
というか忘れる訳がない!
これからもみなさんよろしくね!!
全国各地で乾杯できる人達がいる。
そんな人達をこれからもっともっと増えることを願って今夜も呑みに行ってきます!(笑)
乾杯!
知らない世界に産み落とされて
俺たちは不安で泣いたよな
それから沢山色んな経験して
沢山仲間が出来たよな
でもただ一つだけ苦手な事があるんだよ
それは別れってやつでさ
別れと別れないと前に進めないって
いくら馬鹿な俺でもわかってるぜ
馬鹿正直者シンガーソングライター浜田ケンジの4thアルバム『HINEMOSU NOTARI』が7月17日にリリースされた。
「阿呆がひたむきに歌うのって なんでこんなにもグッと来るんだろう」
これが今作のキャッチコピーだ。
彼は今、新作を引っさげて全国各地を歌い巡っている。
【浜田ケンジ オフィシャルサイト】
http://kenji-hamada.com
【公演スケジュール】
http://kenji-hamada.com/live