オアシスやブラーに代表される90年代のブリットポップのシーンから登場したバンド、トラヴィス。
1997年に『Good Feeling』でアルバム・デビューを果たした彼らが、バンドのさらなる躍進を目指すべく、セカンドアルバムの制作に取り掛かっていた時のこと。
彼らの出身地であるスコットランドのグラスゴーはヨーロッパでも特に雨が多く、1年を通して雲がかかっている。そんなグラスゴーの空模様にうんざりしたトラヴィスのフロントマン、フラン・ヒーリィは冬のある日に晴れた空を求めて、太陽が照らすイスラエルの観光地、エイラートへ2泊の休暇に出た。
しかし、そこでフランを迎えたのは晴れた空ではなく、滅多に降ることのない雨だった。この不運な体験からフランは、のちに代表曲となる「Why Does It Always Rain On Me?」を書く。
どうして僕のいるところはいつも雨なんだ
太陽が輝いているときでさえ
僕は雷から逃れられないんだ
同曲を収録した2ndアルバム『The Man Who』は1999年5月にリリースされ、それまでのブリットポップとは一線を画した世界観で高い評価を受けるも、売上はいまいち伸びずチャートは19位にとどまった。
しかし、ある出来事がバンドの運命を大きく変えることになる。
6月26日、グラストンベリー・フェスティバルにトラヴィスが出演した時のこと。この日、観客の前では初披露となる「Why Does It Always Rain On Me?」をフランが歌い出した時だった。それまでずっと晴れていた空模様が急に変わり、突然雨が降りだした。
晴れ渡った日々よ
君はどこに行ってしまったんだ
このエピソードがメディアで取り上げられると、ラジオ局にはリクエストが寄せられ、アルバムは再びチャートを昇りはじめた。そしてリリースから3ヶ月後、ついにトラヴィスは初の全英チャート1位を獲得する。
野外での雨は歓迎されないものだが、このときばかりはトラヴィスにとって天の恵みとなった。「Why Does It Always Rain On Me?」はバンドを代表する曲になると同時に、ファンの間ではトラヴィスがこの歌を歌うと本当に雨が降るという説が浸透する。
それがよく分かるのが2014年6月、トルコで開催されたイベント、ブラックボックス・イスタンブールでのステージだ。
「Why Does It Always Rain On Me?」が始まると、室内であるにもかかわらず観客が一斉に傘を広げた。色とりどりの傘で観客席が埋め尽くされた不思議な光景は、ギターのアンディ・ダンロップが映像に残そうと観客のカメラを借りてその模様を撮影しており、その一部始終を見ることができる。
アンディによる撮影は2分50秒あたりから
こちらは全体を撮影した別カメラ
●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから