2015年5月15日に天国へと旅立ったB.B.キング。その生涯で残した数多くのアルバムの中でも、最高のブルース・アルバムの1枚と語り継がれているのが『Live at Regal』だ。
1964年の11月21日にシカゴのナイトクラブ、リーガルシアターで録音されたこのアルバムは、ビッグバンドをバックに白熱のプレイを聴かせてくれる。
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だがキングに言わせれば、このアルバムはいい演奏には違いないものの、そのときよりいい演奏は何百回もやってきたつもりだという。
そんなキングが自身のベスト・パフォーマンスの1つとして挙げているのが1967年にヒッピーの聖地、フィルモア・オーディトリアムで催されたライブだ。
仕掛け人はマネージャーの“シド”ことシドニー・サイデンバーグ。もともとはキングの会計士だったが、シドを信頼して何かと相談していたキングに説得されて、マネージャーを引き受けたばかりだった。
シドは黒人だけでなくもっとマーケットを拡大して、今よりもたくさんの人たちにキングの歌を聴いてもらおうと持ちかけた。
以前はブルースといえば黒人が聴くものだったが、ジョン・レノンやキース・リチャーズ、エリック・クラプトンといった、ブルースの影響下にあるロック・ミュージシャンたちの台頭によって、ブルースは白人の若者にとっても身近なものとなっており、今なら若い白人のファンも獲得できるはずだとシドは睨んだのだ。
キングはすでに42歳で十分なキャリアを積んでいたが、シドが提案した新たな挑戦に心を踊らせた。
新たなマーケットを開拓するにあたってシドが選んだのが、サンフランシスコにあるヒッピーたちの聖地、フィルモア・オーディトリアムだ。
もともとは黒人向けのクラブで、その頃はキングも何度か演奏したことがあったが、のちに伝説のプロモーターとなるビル・グラハムがオーナーになってからは白人向けのロックがメインになり、グレイトフル・デッドやジェファソン・エアプレインといったフラワー・ムーブメントを牽引するバンドの根城となっていた。
2月26日、フィルモア・オーディトリアムに着いたキングが目にしたのは長髪で絞り染めのシャツを着た若者たちの姿だった。着る服も違えば住む世界も違う彼らが本当に自分の演奏を聴いてくれるのか、キングは不安を抱かずにはいられなかったという。
時間になってステージに上がると、甘い匂いの煙が充満する室内には大勢のヒッピーが床に座っていた。
「レディース・アンド・ジェントルメン! 我らが取締役会長の登場だ、B.B.キング!」
ビル・グラハムが気の利いた言葉でキングを紹介すると、ヒッピーたちが皆立ち上がって拍手喝采が巻き起こった。
演奏もしていないうちからスタンディング・オベーションを浴びるなんて、それまでのキャリアの中で初めてのことだった。思わず涙が出た。ぼろぼろと涙を流しながら、私は思った。
「この若者たちは、オレがまだ弾いてもいないうちからオレのことを愛してくれる。この愛に報いるにはどうしたらいいだろう?」
答えは音楽の中にあった。その夜、私はかつてないぐらい心をこめて演奏した。
(『だから私はブルースを歌う―B.B.キング自叙伝』より)
両者の間にあった壁は、キングが勝手に想像したものだった。数多くのロック・ミュージシャンがキングに敬意を払うように、若者たちもまた敬意を払ってその演奏を聴いたのだった。
目の前で起こっていることが信じられない。私とフラワー・チルドレンの間に、かくも緊密で楽しいコミュニケーションが成り立っているという事実が信じられない。だが、それはまぎれもなく真実だった。おそらく、あれは生涯最高の演奏だったかもしれない。少なくとも、私がついに新しい方向へ動き出したことを示す演奏だったことは確かだ
このライブによって、自分の歌が人種も世代もジャンルも越えて伝わることを実感したキングは、ロックフェスやジャズフェスにも積極的に出演するようになり、さらに多くのファンを獲得していくこととなる。
残念ながらこのときの演奏は残されていないが、同じ年にフィルモア・オーディトリアムの近くにあるウィンターランドで録音されたライブからこのときの演奏が想像できる。

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