ポリキャット(Polycat)は、タイ バンコクを拠点に活動するポップ・バンド。ネット上を回遊しているうちに彼らの音楽と偶然出会い、一気に耳を奪われた。
ポリキャットの日本デビュー作となるミニ・アルバム『土曜日のテレビ』は、リード・トラック「たくさんの花」をはじめ4曲が日本語詞で作られたもの。山下達郎や角松敏生あたりの日本のAORからの影響を感じさせつつ、昨今の世界的なトレンドといえよう80年代のシンセ・ポップを現代的に解釈したサウンドが懐かしくも新鮮に響く。そして何より美しくキャッチーなメロディと、伸びやかなハイトーン・ボイスが実に心地よい。
ボーカル/ギター担当で、ソングライティングとプロデュースも手がけるチェンマイ出身のRatana Janprasit(通称:Na)は、もともとスカレンジャーズというブラスセクションを擁するダンス・バンドで活動していたが、2011年にポリキャットを結成。現在はベースのPure Watanabe、キーボード/トランペットのPalagorn Gunjina(Tong)の3人で活動している。
昨年タイでリリースされたというセカンド・アルバム『80 Kisses』は、先述のミニ・アルバム同様にシンセ・ポップなサウンドを基軸にしながら、幅広い音楽的嗜好を窺わせる充実の作品。中でも収録曲の「So Long」はYouTube再生回数約3400万回超え、さらに同収録曲「Alright」は約6400万回再生をカウント。インディー・バンドだったポリキャットは、今や世代を超えて愛されるグループとなった。タイ国内のフェスに数多く出演するなどライブも勢力的に行っており、フランスの人気グループ〈フェニックス〉のバンコク公演ではオープニング・アクトを務め、ライブ・バンドとしての実力も折り紙つきの彼ら。今年10月には念願の初来日ツアーを敢行した。
しかし、バンコクの若者がいかにして日本のシティポップに出会ったのか? バンコクでも活躍する日本人DJ MOOLA氏によると、バンコクにもインディーズ・バンドが活躍するシーンがしっかりとあって、中には日本の渋谷系に影響を受けたミュージシャンも存在するのだとか。そしていわゆるアップタウンに暮らす若者の間ではアナログレコード文化も愛されていて、ポリキャットのボーカルであるNaも日本から流れてくる中古盤を買いあさっているうちに、日本のシティポップなどに触れていったのだろう。彼はフェイバリットとして山下達郎や安全地帯、カシオペアなどの名前を挙げている。先日、バンドとしての初来日ライブを目撃したが、その時には山下達郎「いつか」や久保田利伸「LA・LA・LA LOVE SONG」のカバーも披露し、初めて彼らの演奏を観る日本のオーディエンスも大きく沸かせていた。
またSuchmosや思い出野郎Aチーム、never young beachなど現行の人気バンドにもシンパシーを感じているようで、新旧問わず日本のポップ・ミュージックに親近感を持ち、その影響を反映させたり、あるいは同時代性を共鳴させながらオリジナルの音楽表現として昇華しているあたりは、同じ東南アジア圏であるインドネシアのポップ・バンド〈イックバル〉のスタンスに通じるようでもある。
ちなみにミニ・アルバムの『土曜日のテレビ』というタイトルは、バンコクで土曜日の朝に日本のアニメ作品が放映されていることから名付けたのだという(さすがに『オレたちひょうきん族』インスパイアではなかった)。ポップ・ミュージックやアニメなど日本文化への愛情とリスペクトを日本語詞の歌として表現しながら、国境を超えて自らの音楽を響かせようとしているポリキャット。そんな背景を知ったら、より一層応援したくなるというものだ。そして、彼ら以外にも興味深いサウンドを聴かせるバンドやミュージシャンがまだまだ存在するのだという。そんなタイのインディー・ポップ・シーンも、今後もこのコーナーで紹介していきたい。
取材協力:MOOLA、加藤亮、FABTONE INC.(敬称略)
official Facebook Page
https://www.facebook.com/polycatband
POLYCAT JAPAN TOUR
10月21日(土)東京・原宿クロコダイル
10月23日(月)東京・青山Wall & Wall
10月25日(水)大阪・心斎橋パリミキ アメリカ村店(フリーイベント)
10月28日(土)東京・代々木公園Earth Garden(フリーイベント)