♪ 私は誰か?
言葉にはできない
目の前の季節は
日々刻々その姿を変えていく
詩人、僧侶、暗殺者、泥棒
私の魔術の前に
人々は不信を抱くこともない ♪
ロシア出身のギタリスト、Estas Tonne。名前の読み方はわからない。ここでは英語の読み方である「イースタス」と呼ぶことにする。
イースタスがロシアを離れたのは15歳の時だ。理由は語られていない。
少年時代からクラシック・ギターの素養はあったようだが、今の彼のギター・スタイルは、彼の旅の遍歴がもたらしたのだろう、と想像するしかない。
♪ 私は誰か?
ただの嘘の束だ
私はカードの塔にして
吟遊詩人の物語だ
私は愚か者の戯れにして
輝く宝石だ
私は飴で覆われた
大空にそびえ立つ城だ ♪
イースタスはヨーロッパを通り、イスラエルまで足をのばした。インドへも足を運んだ。
現在はヨーロッパをホームグラウンドにしているが、旅は日々、続いている。
街角に現れると、イースタスはギターを取り出す。そして様々なサウンド・エフェクト、アタッチメントをセットする。徐々に人々が集まってくる。
ギターはアンプに繋がれ、イースタスがエコーをかけてギター弦をつまびいた瞬間、街角は彼の世界となってしまうのである。
観衆の中には、小さな子供の姿も見える。大人も子供も、じっとイースタスの音に耳を傾け、身を任せている。
「この体験の後、何かが変わっているだろう」
預言者のようにイースタスは言うと、ギターを弾き始める。
♪ 偽りの偶像を叩き壊し
真実の源を解き放つのだ
探すのをやめ、見つけるのだ
聞くのをやめ、耳にするのだ
見るのをやめ、ただ観るのだ
あなたの意思のまま行う
それ以外、すべきことは何もない ♪
その風貌から、ヨーロッパの人々はイースタスにイエス・キリストの面影を探す。
「Who am I?」は、2008年に発表された彼の『ボヘミアン・スカイズ』というアルバムに収録されている、彼としては珍しい詩がついた楽曲だが、昨年、映像作家が素晴らしいビデオを仕上げ、公開した。
私は誰か? 大自然が主人公となり、壮大な物語が展開されていく。。。