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ジャージー・ボーイズ〜音楽への愛に満ち溢れた「君の瞳に恋してる」

2024.06.07

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『ジャージー・ボーイズ』(JERSEY BOYS/2014)


「絆」とか「友情」という言葉をよく耳にする。しかし口にするのは簡単で、実際に深刻なトラブルに見舞われた時、そんな台詞を交わした当人たちには亀裂が生じることがほとんどだ。大人の人生はそんなものだと割り切りながらも、心のどこかではあの美学を忘れられない。幼い頃からそんな世界を叩き込まれた人ほど特に遭遇する出来事だと思う。

『ジャージー・ボーイズ』(JERSEY BOYS/2014)は、そんな忘れかけたスピリットをそっと観る者の胸に音楽と共に届けてくれる素晴らしい作品だ。ロック/ポップ史にその名を永遠に残すフォー・シーズンズの実話を基に描いたブロードウェイのロングラン・ミュージカルの映画化であり、クリント・イーストウッドが監督している。

地元を出る方法は3つ。
“軍隊に入る”。でも殺される。
“マフィアに入る”。それも殺される。
あるいは“有名になる”。
俺たちはあとの2つだった。


ニュージャージー州の貧しいエリアが物語の最初の舞台。主人公はフランキー・カステルチオ(ジョン・ロイド・ヤング)という少年。彼にはトミー・デヴィート(ビンセント・ピアッツァ)やニック・マッシ(マイケル・ロメンダ)という兄貴分の仲間がいる。彼らはバンドを組んでいて、独特のファルセットな歌声を持つフランキーに音楽や歌い方を教え込んでいた。

しかし一方でイタリア系移民の性。マフィアのボス(クリストファー・ウォーケン)とも関係があり、犯罪に手を染めたり刑務所に入ったりして、フランキーは面食らうだけだった。彼らに爽やかな歌をイメージする人も多いが、その生まれた背景は凄まじい。

その後、フランキーがヴァリと改名したり、当時無名役者だったジョー・ペシ(今や名優!)という友人から、新進気鋭のソングライターであるボブ・ゴーディオ(エリック・バーゲン)を紹介されてバンドは4人組となった。フォー・シーズンズの名は、トミーの過去の悪事が原因でオーディションに落とされたボウリング場の名前から名付けられた。

NYのブリル・ビルディングでプロデューサーのボブ・クリューとの再会をきっかけに、本格的にデビューする4人。しばらくはアイドル歌手たちのバックコーラスの仕事を続けていたが、ボブが書いた「Sherry」でいきなりナンバーワン・ヒットを飛ばしてスターとなる。「Big Girls Don’t Cry」や「Walk Like A Man」も続けて1位になった。すべてが順調に思えたのだが。

ツアー暮らしでフランキーの夫婦生活や子供たちとの関係に暗雲が立ち込める中、あるTV番組の本番収録直前に、トミーが莫大な借金を作って取り立て屋に迫られている事実が発覚する。バンドの経理をギャンブル浪費癖のあるトミーが握っていたことが原因だった。

すぐさまギャングのボスに仲裁に入ってもらうが、フランキーはトミーが作った借金を自分たちが返済することを決意。その理由は、まだ若かった自分に音楽の素晴らしさを教えてくれたニュージャージーでの日々という想い出があるからだった。フランキーとボブは、それからの日々をステージや曲作りに勤しむことになる……。

名曲を多数持つフォー・シーズンズだけに、名場面は数知れない。やはり邦題「君の瞳に恋してる」として(後にディスコソングとしても)余りにも有名な「Can’t Take My Eyes Off You」の誕生と初披露のシーンはとても興味深い。

また、完済後に今度はフランキーの娘が薬物過剰摂取で亡くなるという悲劇に、思わず涙してしまう人も多いだろう。父は娘の夢を応援していたのだから。静かに聴こえた「My Eyes Adored You」が印象的だった。

映画のエンディングロールでは、映画のキャストではなく、フォー・シーズンズの「Rag Doll」が流されるのもイーストウッドの粋な計らいだ。夢があり、成功があり、トラブルがあり、悲しみがあり、再生がある。この作品には絆と友情、そして何よりも音楽への愛が満ち溢れている。

余談だが、この映画を観終わった後、二つの青春映画を鮮明に思い出した。『ディア・ハンター』はクリストファー・ウォーケンが出演していたベトナム戦争絡みの名作で、フランキー・ヴァリの「君の瞳に恋してる」が効果的に使われていた。

それから1960年代前半のNYのイタリア系の若者たちを主役にした『ワンダラーズ』のオープニングは、フォー・シーズンズの「Walk Like A Man」が高らかに鳴り響いていた。


君の瞳に恋してる」のシーン


映画の予告編


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*日本公開時のチラシ
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※このコラムは2014年10月に公開されたものを更新しました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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