冬季オリンピックが開かれているソチは、美しい砂浜が広がる海岸で海水浴が楽しめることから、ロシアでは貴重なリゾート都市として発展した。
夏のバカンスで賑わう海辺の街は、地中海に面したフランスのリヴィエラ地方とも雰囲気が似ていると言われる。
そんなビーチリゾートを舞台にしたような曲が、「Каникулы любви(恋のバカンス)」だ。
1965年に人気歌手ニーナ・パンテレーエワが歌ったこの曲は、テーマソングとして使われた映画が大ヒットしたこともあって、ロシアでは知らない人がないほど有名になったという。
多くのロシア人が自国で作られた楽曲だと思っているらしいが、オリジナルは1963年にザ・ピーナッツが歌った「恋のバカンス(VACANCE DE L’MOUR)」だ。
当時の日本人の感覚からすればかなり大胆な内容の歌詞で、フランス語のサブ・タイトルが付けられていたこともあり、外国曲のカバーだと思っていた人が多かった。
だがこの歌は「宇宙戦艦ヤマト」でも有名な宮川泰が作曲し、「愛の讃歌」はじめとするシャンソンの訳詞でも知られる岩谷時子が作詞した純国産の歌謡曲だ。
ソビエト連邦から日本に駐在していた国営放送局の職員が、ザ・ピーナッツのレコードを気に入って本国のラジオで紹介したところ、反応が良かったので自分でロシア語の歌詞をつけて、積極的にプロモーションしたのがヒットにつながった。
日本の最新のヒット曲が鉄のカーテンによって文化交流が閉ざされていたソ連で、何の情報もないまま純粋に音楽として発見されて、若者たちに愛されていたのだ。
しかしそのことについて日本では長い間、誰一人として気付かないままでいたという。
時代の変遷とともにロックにアレンジされたり、ディスコになったり、民族楽器のバラライカで演奏されたりと、今ではロシア文化にすっかり溶け込んでいる。
何度聴いても飽きがこない、いつの時代でも古くならない「恋のバカンス」は、日本でもロシアでも世代を超えて歌い継がれているスタンダードだ。
同時代の「上を向いて歩こう」もまた、日本だけでなくアメリカでも多くのカバーによって受け継がれているから、いまから半世紀前の日本の歌謡曲は世界に通用する力を持っていたということになる。
ザ・ピーナッツ
Каникулы Любви 歌謡曲「恋のバカンス」日本語+ロシア語 合唱
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