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バート・バカラック育ちの椎名林檎

2024.11.25

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80歳を迎えたバート・バカラックの来日公演は、2008年2月に東京国際フォーラムで行われた。

「2008年の来日公演を家族と観ました。後から親戚も観ていて泣いたという話を聞いたり、結局、私の親しい人たちはみんなバカラック育ちなのだと思いました」


そう語ったのは日本のシンガー・ソングライター、椎名林檎である。

コンサートに感激して、相模大野の公演も追いかけて観に行った椎名林檎は、運良くバックステージで本人に会うことができた。それが縁となって曲を提供してもらうことになったというから、音楽の神様はなんとも粋なはからいをしてくれる。

「その時点で Tonio K の歌詞も付いていましたし、EZOの出演も決まったばかりでしたし、『カルテットと絡むピアノはこんな感じかな?』なんて……とかく忙しく考えを巡らせていた所為でしょうか、はしゃぐ暇がありませんでしたね(笑)。だけどバカラックの曲を演奏させて頂けて、光栄至極です」


バカラックの来日公演から半年後の8月18日、北海道の『ライジング・サン・ロック・フェスティバル2008 in EZO』の〈SUN STAGE〉に、椎名林檎が登場した。

ステージ上で、斉藤ネコ・カルテット(ヴァイオリン×2、ビオラ、チェロ)の4人がセッティングを終えたところに椎名林檎が現れて、弦楽四重奏をバックに歌い始めた。1曲目はバカラックの名作、「アルフィー(ALFIE)」だった。

アルフィー、いったいどうしたというの?
今だけのために刹那的に生きるつもりなの?


スタンダード・ソングは様々な形で後世に歌い継がれるが、この日の演出は最高の部類に入るだろう。

「アルフィー(ALFIE)」(作詞:Hal David / 作曲:Burt Bacharach)は、1966年にマイケル・ケイン主演のイギリス映画、『アルフィー』のエンディング曲として誕生した。次から次に新しい女性と付き合っては別れるプレイボーイのアルフィーが、物語のラストでロンドンの裏通りを野良犬と歩きながら、「人生とは何だろう」と自問するシーンに歌が流れる。


「アルフィー」(1966)

ハル・デイヴィッドとバート・バカラックのコンビによる作品で、オリジナルはリヴァプール出身の女性シンガー、シラ・ブラックが歌った。

オーケストラとコーラスと歌による一発録りという貴重なレコーディング映像で、指揮してピアノを弾いているのはバカラック本人だ。そこには写っていないが、プロデューサーはビートルズで大成功を収めていたジョージ・マーチンだった。

2004年にはニューヨークが舞台になったリメイク版が、ジュード・ロウ主演で作られた。ローリング・ストーンズのミック・ジャガーが音楽を担当し、イギリスの女性シンガー・ソングライター、ジョス・ストーンが歌った。


「アルフィー」(2004)

2008年の夏に、ライブで初披露されたバカラックからの提供曲、「IT WAS YOU」がレコーディングされたのはそれから5年後である。弦楽4重奏+椎名林檎の歌とピアノという、ライブと同じシンプルな編成での一発録りだったという。
 
シラ・ブラック「ALFIE」(1966)


ジョス・ストーン「ALFIE」(2004)

椎名林檎 「IT WAS YOU」(2013)

椎名林檎『浮き名』
EMI Records Japan

Magic Moments: Definitive Burt Bacharach Collection

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