サンフランシスコでクラッシュのジョー・ストラマーにカーリーン・カーターを紹介した翌年、ニック・ロウは彼女と結婚することになった。
ニックは1979年当時、ロックパイルのメンバーたちと共に、自作の「恋するふたり(Cruel To Be Kind)」をレコーディングしている。
そして6月9日発売のセカンド・ソロ・アルバム『レイバー・オブ・ラスト(Labour of Lust)』の一曲目に収録した。
「恋するふたり」は8月17日にシングル・カットされたが、9月29日付のビルボードHot 100では最高13位となるヒットを記録した。
この曲のプロモーション・ビデオには、アルバムのレコーディングに参加したロックパイルのメンバーが出演したほか、後半の結婚式のシーンにはカーリーン本人が登場してくる。
ニック・ロウがカーリーンと最初に出会ったのは、1978年にロンドンでおこなわれたレコーディング・セッションである。
ロックパイルの相棒だったデイブ・エドモンズが、彼女のデビュー・アルバムのプロデューサーを引き受けていた。
そしてベースを演奏するために、スタジオのセッションに呼ばれたのが、ニック・ロウだった。
その数日後、カーリーンはテレビの人気番組『Toof the Pops』の収録を観に行った時、ニック・ロウが歌っていたことに、遅ればせながら気付いたという。
最初のソロ・アルバム『ジーザス・オブ・クール(Jesus Of Cool)』に入っていた「I Love the Sound of Breaking Glass」は、全英チャート7位のヒット曲だった。
ふたりはまもなくデートをしたが、そこで曲ができたという話をカーリーンが語っている。
私たちは化学反応を起こしました。
最初のデートで、私たちは歌を書いたんです!
まだキスもしていなかったのに。
恋人同士になったふたりは、カーリーンの母であるジューン・カーターと、現在の夫であるジョニー・キャッシュが暮らす邸宅へ挨拶に行った。
ニック・ロウのようなカントリーミュージックの熱狂的なファンにとって、名門のカーター・ファミリーの一員である母のジューンも、義理の父に当たるキャッシュも雲上人のような存在だった。
初めてテネシー州ヘンダーソンヴィルにあるキャッシュ家を訪れたとき、母のジューンはニック・ロウのために、骨董品で埋まったような寝室を用意してくれた。
そして大きなベッドがあるその部屋には、シルクのパジャマに身を包んだ訪問者、ジョニー・キャッシュが先に横になっていた。
その時にニック・ロウは、「ここまで来られただけで十分だ」と思ったという。
だがカントリー界の巨人に対して畏敬の念に気圧されることなく接してみると、意外に「とてもフレンドリーで、素晴らしい人」だった。
ふたりは酒を交わしながら、夜遅くまで古いレコードを聴いて過ごした。
ニック・ロウが聴いておくべきだと考えたキャッシュが、マヘリア・ジャクソン、シスター・ロゼッタ・サープ、ジョニー・ホートンなどのレコードを順にかけてくれたのだ。
さらにキャシュはニック・ロウのソロアルバム『レイバー・オブ・ラスト』から、カントリー調の「Without Love」を取り上げてカヴァーした。
そうした期待に応えるべく、ロウはキャッシュのために新曲「The Beast In Me」を書き下ろすことになる。
<参照コラム>ニック・ロウ〜新曲は義父へのプレゼント
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