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小娘Menina Moça〜イパネマの娘よりも人気があったという“忘れられた”ボサノヴァの名曲

2017.07.02

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君は薔薇のつぼみ 
明日は花開く女 
貴重な宝石 
みんなが欲しがる

朝の太陽を浴びると
海のしぶきが唇を濡らす
月が深夜にヤキモチを焼く


世界中で最も多く放送された楽曲を調べると…ビートルズの「Yesterday」という記録がある。
ギネスブックによると「Yesterday」 は、これまでで最も多くカヴァーされたポピュラーソングとしても金字塔を打ち立てているという。
その“世界で一番有名な曲”の次に多くカヴァーされた曲といえば…ボサノヴァを世界に広めた傑作「イパネマの娘」だという一説がある。
さらに調べてみると…1960年当時、その「イパネマの娘」よりも人気があったボサノヴァの名曲があるのだという。
その歌のタイトルは「Menina Moça(小娘)」。
日本では馴染みのないこの歌は、どんな背景で生まれ、どんな運命を辿ったのだろう?
歌の作者はルイス・アントニオというブラジルのリオ・デ・ジャネイロ出身の男。
1921年に生まれた彼は、幼い頃から音楽に親しみ、陸軍士官学校時代には校歌を作詞作曲し、その才能を買われていたという。
第二次世界大戦中は少尉としてイタリア戦線に出陣し、復員後、27歳となった1948年から本格的に音楽活動(作詞作曲)をスタートさせる。
その類い稀なセンスと、戦後の活気づいた時代の追い風もあって彼の書く作品は次々とヒットを記録する。
1960年、彼が39歳を迎える年に作ったこの「Menina Moça(小娘)」を、当時ボサノヴァ界でその名を轟かせていた人気歌手チット・マジがレコーディングし、大ヒットさせる。
同年、日本では橋幸夫の「潮来笠(いたこがさ)」や、坂本九の「ステキなタイミング」がヒットし、国内初のカラーテレビが登場し、ダッコちゃん大流行していた。


君は小娘
女というよりまだ少女
誘いになんか耳をかすな
できるだけ気をつけて
誰にでも時が来れば恋はやってくるものだ
心を見せてしまったら泣かされるよ


当時、この曲はブラジルのラジオ、テレビ、ナイトクラブなどでよく演奏され、家々の台所で女達がこのメロディーを口ずさんでいたという。
それほどまでに庶民から愛された歌だったが…同時期に人気のあった「イパネマの娘」とは違い、なぜか海外に広まることはなかったという。
何故だろう?
その理由として…“ボサノヴァ”の存在を世界に知らしめたN.Yカーネギーホールコンサート(1962年11月21日に開催された伝説的な一夜)でチット・マジもルイス・アントニオも紹介されなかったことが大きく影響したのではないかと言われている。
カリオカ(リオ出身者)の性格として派閥主義の傾向が強く、一部の派閥が内々にキャストを決めたことがこの歌の運命を変えてしまったのだ。
1960年代後半からはブラジル音楽界にも、ロック、エレキギター、バンドなど“時代の波”が押し寄せ…そんな状況に嫌気がさしたチット・マジは、意欲を失ってステージから遠ざかってゆく。
同時に、この「Menina Moça(小娘)」も人々の記憶から忘れ去られていったという。


<参考文献『ボサ・ノーヴァ詩大全』板尾英矩(著)/中央アート出版社>

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