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パープル・レイン〜真のスーパースター誕生の瞬間を描いたプリンスの自伝的映画

2017.07.26

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今年に入ってからデヴィッド・ボウイやイーグルスのグレン・フライなど大物ミュージシャンが相次いで亡くなったが、その度に彼らの過去の代表作やベスト盤を購入する人が多いようだ。先日亡くなったプリンスも、5/7付のビルボードチャートで1位・2位・6位とTOP10に3枚も突如ランクインした。1位と6位はベスト盤で、2位が『パープル・レイン』。これはプリンスと言えば、やはり『パープル・レイン』を思い浮かべる人が多いことを証明した結果だろう(*このコラムは2016年5月4日に公開されたものです)。

1984年のリリース当時を思い返すと、あの衝撃の大きさは凄かった。前作『1999』によって機は熟していたことは追悼コラム「プリンスの足跡〜アーティストとしての“自由と権利”を守り貫いた孤高の天才」でも触れた通りだが、プリンスが真のスーパースターになったのは紛れもなく『パープル・レイン』。

MTV時代が本格的に幕開けてヴィジュアル性に富んだアーティストたちが増殖し、現在よりも“洋楽”が若者文化に深く浸透・作用していた1980年代。デュラン・デュランやカルチャー・クラブやワム!といったUKポップ、ヘヴィメタル勢、サントラ映画群、そしてマイケル・ジャクソンやシンディ・ローパーやマドンナらの動向を追いかけることがポップカルチャーの最先端だったあの時代。そんな頃にプリンスはあまりにも眩しくブレイクしたのだ。

ミック・ジャガーはその数年前から「プリンスがどんなに凄い奴か君らには分からないだろう」と言っていたし、デヴィッド・ボウイは「彼は今、一番気になる存在だ」とコメントした。ここで1983年と1984年のビルボード・チャートでナンバーワンを記録したアルバムを並べて、あの時代の風景を再生してみよう(数字は1位を獲得した週数)

○1983年
Business as Usual/Men at Work ⑮*前年分含む
Thriller/Michael Jackson ㊲*翌年分含む
Flashdance/Soundtrack ②
Synchronicity/The Police ⑰
Metal Health/Quiet Riot ①
Can’t Slow Down/Lionel Richie ③

○1984年
Footloose/Soundtrack ⑩
Sports/Huey Lewis & the News ①
Born in the U.S.A./Bruce Springsteen ⑦*翌年分含む
Purple Rain/Prince and the Revolution ㉔*翌年分含む

単なる売り上げベースを上から並べただけの現在とは違い、当時はどれだけ聴かれているかも加味していたチャートだけあって、ナンバーワンになることは大きな意味を持っていた。世の中への影響力を反映していたとも言える。84年に至ってはマイケルを含めて僅か5作。そんな中で『パープル・レイン』は約半年間もトップを独走し続け、「When Doves Cry」「Let’s Go Crazy」「Purple Rain」「I Would Die 4 U」「Take Me with U」などシングル・カットされる曲すべてが大ヒットした。

『パープル・レイン』(Purple Rain/1984)は自伝的要素をたっぷり盛り込んだプリンス初主演の大ヒット映画で、真のスーパースター誕生の瞬間までを描いたこの物語は、現実のプリンスとも見事にシンクロしていく。

撮影は1983年11月から7週間に渡って故郷のミネアポリスで行われ、ウェンディとリサのいるザ・レヴォリューションやモリス・デイ率いるザ・タイムといった面々が実名で登場。また、意見が合わずに対立してプリンス・ファミリーを脱退したヴァニティに代わって、5000人のオーディション中から無名モデルのパティ・コテロを急遽起用。彼女はアポロニアと名付けられた。

この映画はサクセス・ストーリーや青春ロマンスのほか、プリンス演じるキッドと父親の物語という側面も持つが、プリンスは実際に8才の時にピアノを弾く父親のステージを見てミュージシャンになることを決意したという。やがて両親の離婚をきっかけに孤独な少年の心の拠り所は音楽になっていき、独学で楽器を覚えて作詞作曲も手掛けていく。なお、映画にはプリンス以外の曲も数曲使われているが、「ファーザーズ・ソング」は本当の父親が作曲したものだ。

ミネソタ州の工業都市ミネアポリス。有名なライヴスポット「ファースト・アヴェニュー」ではキッド(プリンス)のバンドであるザ・リヴォリューションがステージに立っている。客席の中には明日のスターを夢みるアポロニアもいる。二人はすぐさま恋に落ちるが、キッドの両親は喧嘩ばかりしていて、父親は酒に溺れて母親に暴力を振るう毎日。キッドは地下室に閉じ籠って音楽に没頭するか、バイクで走り回るかして、現実から逃れようとする。

このクラブの大スターはモリスのいるザ・タイムで、アポロニアの夢を利用して近づこうとする。キッドは両親のこともあってバンドのメンバーやアポロニアと衝突していき、より孤独になっていく。そんな時、父親がピストル自殺を図る。どうしようもない気持ちで自暴自棄になるキッドだったが、音楽を辞めていたはずの父親の楽譜を見つけた時、彼の心で何かが変わろうとしていた……。

クライマックスに演奏されるタイトル曲「パープル・レイン」はこの映画のハイライトで、これからもプリンスが生んだ永遠の名曲として、多くの人々の心をとらえ続けるだろう。

君に悲しみを与え
君を苦しめた
幸せを与えたかったのに
君の笑顔を見たかったのに
紫色の雨の中で
パープル・レイン パープル・レイン
君が濡れるのを見たかった
紫色の雨の中で……

時は流れて人の心は変わる
二人で新しいものを求めよう
リーダーが欲しいと君は言う
僕がいるよ
君のその手を引かせておくれ
分かったら手で答えてくれ


予告編


名曲「パープル・レイン」

『パープル・レイン』

『パープル・レイン』


*日本公開時チラシ
140237_1
*参考/『パープル・レイン』パンフレット

*このコラムは2016年5月4日に公開されました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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