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季節(いま)の歌

枯葉─前編〜フランスで生まれたシャンソンのスタンダード

2015.12.13

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日ごとに寒さが増してゆく今日この頃。
美しい紅葉も色褪せて、落葉が舞う季節の到来です。
今回<季節(いま)の歌>では、時代やジャンルを超えて愛されつづける名曲「枯葉」をご紹介します。


──ハンガリー出身の作曲家ジョゼフ・コズマが1945年に作曲したこの楽曲は、第二次世界大戦後のシャンソンナンバーとして誕生した。
今やジャズの定番曲としても多くのミュージシャン達にカヴァーされ、数え切れないほどの音源や名セッションが存在することでも知られている。
フランスの詩人/映画作家ジャック・プレヴェールが書いた原詞のほか、英語をはじめ各国語の訳詞で広く歌われている。
オリジナルのフランス語タイトル「Les Feuilles mortes」を直訳するとmortes(死んだ)Feuilles(葉っぱ)、つまり枯葉を意味する言葉である。
原詞の内容は、若いころお互いに愛し合っていた男女が別れてしまい…消え去ってゆく遠い日の想い出や後悔を、散りゆく枯葉に重ねながら慨嘆するというもの。
その比喩は切なく美しく…実に叙情的である。

あぁ私はあなたを忘れはしない
私たちが友人でいた幸せな日々を
あの頃、今日よりも人生は美しく
そして太陽は明るかった
枯葉がシャベルで集められる
想い出と後悔と共に…



この楽曲は、フランスの天才バレエダンサー/振付家ローラン・プティが旗揚げしたバレエ団のステージ演目『Rendez-vous』の伴奏音楽の一つとしてコズマが作曲したメロディーが原型となっている。
翌1946年に製作されたマルセル・カルネ監督の映画『夜の門』(Les Portes de la Nuit)で挿入歌としてそのメロディーが用いられることになり、映画の脚本にも携わったプレヴェールが詞を付けることとなった。
こうして、名曲「枯葉」は誕生したのだ。
またプレヴェールとコズマは、戦時中に製作されたカルネ監督の名作映画『天井桟敷の人々』でも、それぞれ脚本と音楽で携わっていた名コンビだった。


映画『夜の門』は戦後の世相を背景とした群像劇で、映画に出演した新人歌手イヴ・モンタンによって劇中で歌われたのが初出となったが、このバージョンは映画共々あまりヒットはしなかったという。
しかし、これに続いて当時人気があった女性シャンソン歌手ジュリエット・グレコが歌ったことで同曲は世に認知されるようになり、1940年代末から1950年代にかけ広まり、シャンソンのスタンダード曲となった。
──そして「枯葉」は海を渡り、アメリカをはじめ世界各国でジャンルの壁を超えて演奏される曲となった。

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