イタリア語で海岸を意味する“リヴィエラ”を舞台に、何とも切ない大人の歌物語が描かれる。一般的にリヴィエラというと、イタリア北西の海岸沿いを指す。
この「冬のリヴィエラ」は、森進一のシングル曲として1982年11月リリースされ、ビール会社のウインターギフトのタイアップソングとして幅広い世代に愛された“冬ソング”である。
森にとっては1974年に発表した「北航路」以来、実に9年ぶりのチャートトップ10入りを果たしたヒットソングとなった。作曲は大瀧詠一、そして作詞は松本隆という名コンビによるもの。
日本語によるロック・ポップスの礎を築いたとされる伝説のグループ、はっぴいえんどが1972年に解散した後、大瀧は新たな創作活動に邁進し、松本は売れっ子作詞家として頭角を現していた。
この歌がヒットする前年(1981年)に、大瀧は松本がほぼ全曲作詞を手がけたソロアルバム『A LONG VACATION』(愛称:ロンバケ)を発表し、日本のポップス史に金字塔を打ち立てている。
同年、大ヒットを記録した松田聖子の「風立ちぬ」もこのコンビが手掛けたものだった。
そんな二人が紡いだ歌なだけに、唄い手が演歌スターであっても、“大瀧サウンド”全開の60年代アメリカンポップ風の曲となっている。二人に曲を依頼した森のレコード会社は、“異色の組み合わせ”を狙ってのことだった。
「森進一に演歌とは全く違うロンバケの世界観を歌わせたい!」
当時、大瀧は作詞を自分で手掛ける時は曲を先に完成させ、人に作詞を任せる際には歌詞が先で後から曲をつけていた。
「先に好きなように歌詞をつくっていいよ」
松本はあるインタビューで当時のことをこんな風に振り返っている。
「もし演歌を、という注文だったら引き受けなかったな。僕は演歌を聴いて育ってないので言葉の選び方がわからなくて。でもサルヴァトール・アダモの“雪が降る”のような大人のポップスを、演歌の人が歌うのだったらありえると思ったんです。例えばアダモから、もしも作詞の依頼を受けたら…とイメージして作ってみました」
意識したのはロンバケの中の一曲「カナリア諸島にて」だった。松本はそこで描いた大西洋上の島から、実際に旅したイタリア北西部(地中海沿岸のリゾート地)へと舞台を移し、再び恋の終わりの物語を綴った。
特にこだわったのは2番に登場するフレーズだった。別れを決めた男と、その気配を感じ取った女とのドラマを絶妙に描いてみせたのだ。
生前、大瀧もあるインタビューで、松本が仕上げてきたこの歌詞についてこんなことを語っている。
「もう完璧に世界ができちゃってました(笑)。歌詞のイメージにあわせて曲作りをしていくうちに、イギリスのベテラン歌手マット・モンローの“Walk Away”に似てきたんです(笑)」
松本はこの曲で日本作詩大賞を初受賞する。曲のヒットから31年が経った冬の日、大瀧はこの世を去る。2013年12月30日、65歳での急逝だった。
悲しみの中にいた森進一は、ある音楽番組に出演した際に、こんなコメントを口にして歌を披露した。
「今も私にとって宝物のような一曲です。大瀧さんに届きますよう、心を込めて歌わせていただきます」
<引用元・参考文献『朝日新聞デジタル』>
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