「五番街のマリーへ」は、ペドロ&カプリシャスの5枚目のシングルとして1973年10月25日に発売された。前作「ジョニィへの伝言」と同様にロングヒットとなり、売上枚数は21.2万枚を記録している。
作曲を手掛けたのは、ピンクレディーのプロデューサーとしても知られる作曲家・都倉俊一。そして作詞は、昭和を代表する作詞家・阿久悠である。
この歌には、作詞家・阿久悠の“新しい挑戦”があったという。その試みは、同年の3月に本作と同じ歌手・作家によって発表された「ジョニィへの伝言」から始まっていた。
阿久悠は著書『愛すべき名歌たち〜私的歌謡曲史〜』においてこんなことを綴っている。
高橋真梨子がリードボーカルとして加わる前のペドロ&カプリシャスには、「別れの朝」というヒット曲があった。なかにし礼が作詞したいい作品で、これに負けられないと思い、何か新しさを感じさせたいと思って工夫をしました。そこで一編の映画のようなストーリー性のある歌詞作りに取り組んだのです。
このどこか“日本人離れ”した感覚を持つ歌詞を、当時の関係者は“無国籍ソング”と称したという。「ジョニィへの伝言」に続いて発表された「五番街のマリーへ」は、それまでの演歌メインの日本の歌謡界に衝撃を走らせたのだ。
ごくありふれた日常会話を使いながら、情景がスムーズに浮かんでくる歌詞、それを引き立てるメロディーが新鮮だった。
阿久悠は、この歌に関して著書『歌謡曲の時代〜歌もよう人もよう〜』でこう綴っている。
当時、この「ジョニィ」と「マリー」のシリーズは“無国籍ソング”などと呼ばれていた。これは僕が名乗っていたことではない。世間と言おうか、業界と言おうか、音楽に近い周辺の世論がそう決めつけて、いくらか軽く扱おうとしたのだ。
実はこの「五番街のマリーへ」は、ちょっと面白いシチュエーションで生まれたという。当時、阿久悠が立案者となって企画していた“洋上大学”の船上で作られたというのだ。
1973年の8月、1万3千トンのさくら丸という大型客船が横浜港を出航した。それは“ろまん船”と名付けられた船に女性ばかり700名が生徒として乗り込み、講師として、阿久悠、都倉俊一、三木たかし、中村泰士、井上大輔、森田公一が同乗し、作詞教室や作曲教室を開催しながら日本一周をしたイベントだった。
横浜を出て西へ向かい、九州の外側を通って門司に入港、そこで一日遊び、日本海を北上して函館でまた一日の自由時間、それから東京に戻って来るという一週間のツアーの中で、都倉俊一と阿久悠という油の乗り切ったクリエイター二人が乗船している以上、「それじゃ船上で創作しようじゃないか!」と、なったのがきっかけだったという。
筆の速い阿久悠はすぐに歌詞をまとめ、それに呼応するかのように都倉も船上にあったピアノで曲を乗せたという。出来上がった歌は、さっそく船内のサロンに集った生徒たちの前で披露された。
日本海を北上するロマンティックな船の上での発表とあって、「五番街のマリーへ」は乗船した女性たちの心を一瞬で奪った。
<引用元・参考文献『昭和歌謡100名曲part.2』『昭和歌謡100名曲part.3』塩澤 実信 (著)/ 北辰堂出版>
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