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「さよならウサギ」という歌

2023.09.29

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「あなたはもっと“やるべきこと”をしなきゃ!時間ってあるようでないのよ…」
「あたしササくんがまた歌うのを楽しみにしてるからネ」




最後に会った夜、彼女が僕に言った言葉を憶えている。
奈緒ちゃん、そっちでは歌ってる?映画を撮ってるの?それとも踊ってる?

今から11前の2012年9月29日に彼女はこの世を去った。
44歳だった。
この写真の中で笑うように…「バイバイ!またね!」って。
彼女は僕の恋人だったわけではない。
だけど、出会ったときから“特別な友達”だった。
そして、会えなくなった今も“特別な友達”だと思っている。
2016年の夏、僕は新しい曲を紡いだ。
それは僕が「書いた」のではなく「書かされた」のかもしれない。
きっと彼女が天国で退屈してたのかな?
「そろそろ私のことを歌にしてよね!」とでも言っているかのように。






“特別な友達”、冴島奈緒へ
君が僕に「書かせた」歌、これからも大切に唄っていくけん。
僕が色んな街や場所で唄う姿、時々観においでよ。

【冴島奈緒の写真付きで読めるブログ記事】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12005020096.html

【ガンを隠しながらの…彼女の最後となった活動の記事】
http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20101214/enn1012141602012-n1.htm



彼女と僕は同い歳だった。
恋人とか“男と女の関係”ではなく、特別な友達だった。
出会って約20年間…互いにそう思っていた。

久々に再会したのは、彼女が旅立つちょうど一年前…2011年の秋。
大きなサングラスに(相変わらず)ブッ飛んだ映画から抜け出してきたような姿で、彼女は待ち合わせ場所に現れた。



「ササくん!ご無沙汰ぁ~!また会えて嬉しいわぁ~!!!」
「結婚したんだよね!パパにもなったんだよね!おめでとう!」




大きな目をいっぱいに見開いて、でっかい口で笑う。
彼女は昔から、人目や世間体を気にすることを無意味だと思っている。
あの頃と同じように日本人離れした(!?)ハグをしてきた彼女の身体は、病魔との闘いで痩せ細っていた…。
「あたし今日はお酒飲まないけど、ササくんは遠慮なくどうぞ!」
その日は、僕も酒を飲まないって決めていた。
二人で食事をし、窓から東京タワーが観える店でコーヒーを飲みながら色んなことを話した。



「あたしたちさぁ!この街で色んなことやってきたわよね!」
「色んなことと闘って、色んなものを追いかけて…馬鹿みたいに誰かを愛したり愛されたり…」




少しずつだけど健康を取り戻しつつあるという話に、僕は心から喜び、それを信じた。
いや…「信じていたかった」というのが本音だった。
そして、オレンジ色の東京タワーを観ながら…色んなことを思い出していた。



「あたしこの街が好きよ!まだまだこれから楽しいことを仕掛けなきゃネ!」
「あなたはもっと“やるべきこと”をしなきゃ!時間ってあるようでないのよ…」
「あたしササくんがまた歌うのを楽しみにしてるからネ」




東京タワーを観ながら…その夜が、彼女との最後になった。




彼女との出会いは、二十代の頃。
酒と煙草とロック…僕も含め“ろくなもんじゃない”輩が集うライブハウスの打ち上げの席だったと思う。
当初、僕は彼女の“世間で知られているイメージ”をあまり知らなかった。
いわゆる “過去の作品”というものを観たことが無いに等しかった。
彼女は好奇心と向上心の塊(かたまり)みたいな存在で、エネルギッシュで、インテリで、とてもお洒落な人だった。
仕事、音楽、芸術、ファッション、会話、ご飯、酒…すべてを自分流に楽しむ女だった。
色んな国や街を旅した話、映画の話、これからの人生の話をする時の彼女は、いつも本当に活き活きとしていた。
愛しいボーフレンドがいたり、結婚をしたり、離婚したり、大人の関係の男がいたり…彼女には色んなパートナーがいたけど、その精神(こころ)はいつも“独り”だった気がする。
それは寂しい“一人”ではなく、誰とも群れない孤高の“独り”という意味で。

彼女と僕は、同じステージで歌ったこともなく、同じベッドに寝たこともなく、同じ趣味を共有していたわけでもない。
だけど、出会ったときから“特別な友達”だった。





2021年9月21日、奈緒ちゃんと同じ病(癌)との闘病の末…天国に旅立っていったファッションデザイナー高原啓(Roen・享年51)がブランド立ち上げた時のコレクションで一緒にモデルの仕事をしたのを憶えている。
それが彼女との唯一の共演だった。
あのとき同じランウェイを歩いた、奈緒ちゃん、山口小夜子さんや川村カオリちゃん…そしてタカちゃんもうこの世にはいない人。
「才能のある人、いい人ほど先に逝く」とはよく言ったもんだ。
彼女が初めての舞台(つかこうへい原作:ストリッパー物語)に挑戦した時、池袋の文芸坐ル・ピリエという小劇場まで観に行った。
そこはかつて浅川マキさんが歌っていた(今はなき)伝説の劇場だったのを憶えている。それもまた、懐かしい思い出。

共演や接点はあまりなかったものの、僕等は時々二人で酒を飲み、映画を観に行ったり、共通の知人のライブを観に行ったりして、会うたびに色んなことを語り合った。
大きな目をいっぱいに見開いて、でっかい口で笑う彼女が大好きだった。



「あたしこの街が好きよ!まだまだこれから楽しいことを仕掛けなきゃネ!」




バイバイ奈緒ちゃん…またそっちの街で会おうヨ。
僕はもう少しこっちに残って“やるべきこと”が何なのか…向き合っていくよ。
そして、君の歌「さよならウサギ」を沢山の人に届けられるように…
僕も歌える限り、精一杯歌うけん!
そっちから見守っててね。













『ウサギと僕の物語』

唄うたい佐々木モトアキの代表曲「さよならウサギ」にまつわる、ちょっと不思議で心温まるエピソードを語ります♪
天国にいる友達から届くメッセージ。
目に見えない存在との会話。
あなたは信じますか?
TALK&LIVEという初の試みとなる公演を、福岡と東京で開催します。
「誰にだって忘れられない人がいる。忘れることのできない場面がある。」
“唄うストーリーテラー”佐々木モトアキが自身の体験と共に、短篇映画のような歌をご紹介します♪

<公演情報はこちら↓>
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12819487262.html


■10月13日(金)福岡BAR KING BEE
『ウサギと僕の物語 premiere TALK&LIVE in 福岡』
¥3,500(1Drink代別)
OPEN19:30/START20:00

■10月20日(金)東京・野方 焼酎場ぁ~ くんちゃん
『ウサギと僕の物語 premiere TALK&LIVE in 東京』
¥3,500(お通し代¥500+飲食代別)※12席限定
OPEN19:30/START20:00








こちらのコラムの「書き手」である佐々木モトアキの活動情報です♪

【佐々木モトアキ公演スケジュール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12660299410.html


【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html


【唄うたい佐々木モトアキが、あなたの“お家”に歌いにまいります】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12814620219.html


【佐々木モトアキ 執筆、編集、音楽など様々なお仕事承ります】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12632881569.html


【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
http://www.tapthepop.net/author/sasaki









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