「カーティス・メイフィールド の『スーパーフライ』にデイヴィッド・アクセルロード、ギル・スコット=ヘロンのミニマル感………そういった音楽の細部に至る徹底したこだわりに影響を受けた。あるいは、シンセサイザーが誕生したばかりでムーディな使われ方をしていた70年代のアフリカン・アメリカンのバンドの一員になったつもりで、今回の『サウンド&カラー』を作ったの」(ブリトニー・ハワード)
アラバマ州アセンズ出身の4人組ロック・バンド、アラバマ・シェイクス。高校の同級生だったボーカル/ギターのブリトニー・ハワードとベースのザック・コックレルを中心に、2009年に結成。2011年に初のEPを発表すると、ジャニス・ジョプリンあたりを彷彿とさせる、ブリトニーのパワフルでエモーショナルな歌声と、60年代ソウル、ブルースを基調としたバンド・サウンドが評価を得て、ラフ・トレード(イギリス)、ATOレコード(アメリカ)と契約。2012年4月には初のフル・アルバム『ボーイズ&ガールズ』を発表。全世界で100万枚以上の売上を記録し、各国でゴールドディスクとして認定。また2013年には、グラミー最優秀新人賞をはじめ、3部門にノミネートした。
3年ぶりとなるセカンド・アルバム『サウンド&カラー』は、ラナ・デル・レイなどのセッション・ミュージシャンとしても活躍するシンガー・ソングライターのブレイク・ミルズを共同プロデューサーに迎えた意欲的な作品。前作にも窺えたソウル/ブルースからの影響はもちろん下地になっているが、ドリーミーに幕を開ける「Sound & Color」から、不穏な空気が横溢するファンク「Don’t Wanna Fight」、80年代レゲエの質感に通じる「Guess Who」、ガレージ・パンクのように荒々しく疾走する「The Greatest」、70年代ブラック・ムービーの世界を想起させる「Gemini」など、彼ら4人が持つ音楽性の幅広さを感じさせつつ、バンドとしてのプリミティブな魅力はより鋭利に研ぎすまされたような印象だ。ラフでタフな肌触りながら表現力に富んだバンド・サウンドと、リミッターを超えるほどに熱いブリタニーの歌唱が濃縮され詰まっている。
中でも圧巻なのは、アルバムの中盤で聴ける「Gimme All Your Love」。サイケデリックなバラードとなったこの曲は、ギターのヒース・フォッグも「いろんなコードが入り混じった曲で 、この曲から他の曲が派生していった。 ハードで強烈なリズム&ブルースだけど、途中でガラリと変貌する……まさに僕らが目指した別次元のレベルになったよ」と語る。メンバー自らが影響を受けたブラック・ミュージックの先達に敬意を払いながらも、いかにして今の時代のロックンロールとして響かせるかを純粋に追究した一枚が、この『サウンド&カラー』といえるだろう。
アルバム『サウンド&カラー』は、第58回グラミー賞にて最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム含む全4部門を受賞。インディペンデントで活動するアラバマ・シェイクスのようなバンドが正当な評価を受ける今の時代は、まだまだ捨てたもんじゃない。
Alabama Shakes official website
http://hostess.co.jp/alabamashakes (日本公式サイト)
http://www.alabamashakes.com/
アラバマ・シェイクス「Sound & Color」 MV
アラバマ・シェイクス「Don’t Wanna Fight」(Live on SNL)
アラバマ・シェイクス「Gimme All Your Love」(Live from the Artists Den)
ALABAMA SHAKE JAPAN TOUR 2016
2016年12月12日(月)東京・STUDIO COAST(SOLD OUT!)
2016年12月13日(火)愛知・ZEPP NAGOYA
2016年12月15日(木)大阪・DOJIMA RIVER FORUM
2016年12月16日(金)福岡・DRUM LOGOS
2016年12月18日(日)東京・Toyosu PIT(追加公演)
*詳しくはSMASH公式サイトを参照ください。
*本コラムは2015年5月11日初回公開した記事に加筆修正したものです。