「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the ROOTS

ワルツ#2~歪んだ空間に響く母への愛

2018.10.29

Pocket
LINEで送る

映画『グッド・ウィル・ハンティング』の主題歌「Miss Misery」でアカデミー賞の楽曲部門賞にノミネートされたエリオット・スミスに「Waltz#2」という曲がある。

短編小説のようなこの楽曲の舞台は、カラオケだ。

目の前には、主人公の母親が再婚した男がいる。彼はマイクを握り、そして吸いかけの煙草をふかす。
彼が歌うのは、「Cathy’s Clown」だ。エヴァリー・ブラザーズが歌った往年のヒット曲である。
母親は、無表情だ。主人公には、死んだ陶器の人形のように見える。

だが、歌が終わると、人形は母親に戻り、懐かしい声で息子の名前を呼ぶ。彼が歌う番なのだ。
主人公は気まずい雰囲気の中、選曲でささやかな抵抗をしてみせる。そして選ぶのが、リンダ・ロンシュタットが歌った「You’re No Good」(「悪いあなた」)だ。
この曲は元々、1962年にディオンヌ・ワーウィックの妹、ディー・ディー・ワーウィックが歌ったものだが、主人公はおそらく1975年にナンバーワンヒットとなったリンダのバージョンを歌ったはずだ。

カラオケボックスにおける主人公と母親とその彼氏による歪んだ三角関係を、エリオットは「ワルツ」と表現したのである。
そして主人公は母親に対して、その思いを吐露する。

あなたのことはもうわからない
でも何とかまだ愛そうと思うんだ





エリオット・スミス『XO』
USMジャパン

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the ROOTS]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ