映画『グッド・ウィル・ハンティング』の主題歌「Miss Misery」で、アカデミー賞の楽曲部門賞にノミネートされたエリオット・スミスに、「Waltz#2」という曲がある。
短編小説のようなこの楽曲の舞台は、カラオケだ。
目の前には、主人公の母親が再婚した男がいる。彼はマイクを握り、そして吸いかけの煙草をふかす。彼が歌うのは、「Cathy’s Clown」だ。エヴァリー・ブラザーズが歌った往年のヒット曲である。
母親は、無表情だ。主人公には、死んだ陶器の人形のように見える。だが、歌が終わると、人形は母親に戻り、懐かしい声で息子の名前を呼ぶ。彼が歌う番なのだ。
主人公は気まずい雰囲気の中、選曲でささやかな抵抗をしてみせる。そして選ぶのが、リンダ・ロンシュタットが歌った「You’re No Good」(「悪いあなた」)だ。
この曲は元々、1962年にディオンヌ・ワーウィックの妹、ディー・ディー・ワーウィックが歌ったものだが、主人公はおそらく、1975年にナンバーワンヒットとなったリンダのバージョンを歌ったはずだ。
カラオケボックスにおける主人公と、母親と、その彼氏による歪んだ三角関係を、エリオットは「ワルツ」と表現したのである。
そして主人公は母親に対して、その思いを吐露する。
あなたのことはもうわからない
でも何とかまだ愛そうと思うんだ
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