1973年、イーグルスは珠玉のバラード「Desperado(邦題:ならず者)」を世に放った。同年、27歳になったリンダ・ロンシュタットは、この名曲を自身のアルバム『Don’t Cry Now』に収録して発表した。
ダイヤのクイーンなんて引いちゃだめよ、あなたには荷が重すぎるから
ハートのクイーンが一番だってことは知っているんでしょ?
テーブルに並んでいるものが私には一番に見えるけど
貴方が欲しがるものは手に入らないカードばかり
トランプの絵柄でダイヤは「貨幣」、そしてハートは「聖杯」もしくは「愛」の象徴だと言われている。「お金より大事なものがあるのに、あなたは無いものねだりばかり」と、愚かな男を優しく諭すようにリンダは歌った。
「Desperado」/リンダ・ロンシュタット
1970年代に入り、彼女は「もう一人のイーグルス」と呼ばれるほど、彼らと縁の深かったシンガー・ソングライター、J.D.サウザーと出会う。リンダは彼をアルバム制作のプロデューサーとして迎え、熱く短い夏のような恋に落ちた。
この頃、リンダはジョニー・キャッシュの刑務所慰問コンサートで歌うようになり、ナッシュビルにあるテネシー刑務所で、デビュー当時にバックバンドを務めていたイーグルスの「Desperado」を囚人たちに捧げた。
サウザーと共に作り上げた『Don’t Cry Now』は、リンダにとって転機となった作品と言われている。レコード会社の移籍とマネージャーの交替という、大きな出来事が重なっての発表だった。だが、これらの“変化”がその後の好転のきっかけとなった。
翌年、当時の大物プロデューサー、ピーター・アッシャーと組んだアルバム『Heart Like A Wheel』を発表し、シングル「You Are No Good」で、初の全米1位を獲得。ピーターとの出会いによって、リンダの名は世界の音楽ファンたちに知れ渡ることになった。
当時、ジェームス・テイラーのマネージャー兼プロデューサーだった彼は、リンダの魅力にいち早く気づき、彼女の活躍に関わるようになる。続くシングル「When Will I Be Loved」は全米2位を獲得。リンダは“変化”を味方につけて、華々しく躍進していった。
その歌声は今も色褪せることなく、経済至上主義の世の中に生きる私達を優しく諭してくれているようだ。
「お金より大事なものがあるのに、あなたは無いものねだりばかり」

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