永六輔が歌手としてデビューしたのは1974年の夏のことだ。そのときに先行シングルとして発売されたのが「生きているということは」だった。
〈参照コラム 追悼・永六輔~本当に死ぬまでは、どんな歌もまだ生きている〉 http://www.tapthepop.net/day/50135
続いて発売になったアルバム『六輔その世界』では、「生きるものの歌」がアルバムの背骨のような存在感を放っていた。タイトルからわかるように、2曲は対になる作品であった。どちらも中村八大のプロデュースと作曲・編曲で、人間が生きていくということを正面から取り上げている。
「生きるものの歌」はその後、1975年4月9日から10月1日までNHK総合でオンエアされた歴史バラエティー番組『世界史漫遊』の挿入歌として使われた。世界史上の偉人達の足跡を紹介するその番組では、多彩なゲストが出演して世界の偉人の役を演じた後に、「生きるものの歌」を歌った。
そうした縁があって加山雄三がまず、自分のライブでこれをレパートリーに加えた。永六輔の朋友とも言えるヴォーカル・グループのデューク・エイセスも、1975年のライブからこの歌をライブで歌い始めた。
こうして一度もヒット曲にならなかったが、「生きるものの歌」は忘れられることなく21世紀の現在にまで歌い継がれていく。
それは永六輔と中村八大による六・八コンビの歌に共通する生命力が、歌詞やメロディのなかに宿っていたからだろう。
発表から20年が過ぎた1995年10月、永六輔が無名の人たちが語った言葉をまとめた著書「二度目の大往生」(岩波新書)が出版になった。書籍にしては珍しいことだが、「生きるものの歌」の楽譜がテーマソングという扱いで掲載された。
この時に歌い継いだのはオペラ歌手、中島啓江(なかじまけいこ)だったが、2014年11月に彼女は57歳にして呼吸不全で急死してしまう。
あくる年の2015年、結成60周年を迎えたデューク・エイセスが、記念の曲として「生きるものの歌」をレコーディングする。そこには永六輔が語りで参加している。
そして2016年7月7日、永六輔は83歳で永眠した。
さだまさしが「永六輔さんを惜しむ」という文章を、自分のオフィシャルブログに掲載したのは7月17日のことだ。
永六輔さんが逝去された。とても、とても残念だ。永さんは昔から宮崎康平先生に心酔しておられ、よく島原にお越しになっていた。それで、僕がデビューする時に紹介され、お陰で永さんには若い頃から可愛がって頂いた。パーキンソンを患われても、意気軒昂で、行動的で、負けず嫌いで、格好良かった。その博学にはいつもお目にかかる度に驚嘆させられてばかりだった。僕の500倍くらい好奇心も行動力もあった。なにしろ僕の歌の原点は、中村八大さんと永六輔さんとのコンビによるNHKテレビ「夢であいましょう」の、今月の歌に代表される名作の数々だった。
六・八コンビによる楽曲について、さだまさしは「親子で聴いて、照れくさくなく、ラブソングでもあり、歌謡曲でもあるが、もっとおおらかな温もりを持った素晴らしい世界」とも語っていた。
そんなさだまさしが、永六輔の作品を歌うアルバムを企画したのは自然の流れだった。自分の歌の原点となった作品を歌い継ぐのは、言ってみれば原点回帰でもある。
アルバム『永縁~さだまさし 永六輔を歌う~』のなかで、「生きるものの歌」が取り上げられたのは縁があればこそだ。
このような人と人とのつながりによって、永六輔が書いた歌にはいつも新たな生命が吹き込まれてきた。歌った人が誰だったのか、作った人が誰だったのか、みんな忘れられても歌だけが残っていく。
それが究極のスタンダード・ソングである。
「生きるものの歌」(MV)さだまさし
「加山雄三 1976-武道館ライブ-」

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▼場所/横浜市開港記念会館講堂(ジャックの塔)
▼出演
浜田真理子 with Marino(サックス)
畠山美由紀 with 高木大丈夫(ギター)
奇妙礼太郎 with 近藤康平(ライブペインティング)
タブレット純(司会と歌)
佐藤利明(司会と構成)
▼「チケットぴあ」にて4月5日(土曜)午前10時より販売開始 *先着順・なくなり次第終了
SS席 9,500円 (1・2階最前列)
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A席 6,500円
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