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【インタビュー】二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band ──無二の存在感を放つシンガーとビッグバンド、奇跡のケミストリー

2017.01.16

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1997年よりシンガー・ソングライターとしてのキャリアを始動。2011年発表のオリジナルアルバム『にじみ』が高い評価を集め、さらに2013年公開のスタジオジブリ映画『かぐや姫の物語』(高畑勲監督)の主題歌に「いのちの記憶」が起用されたことで、幅広い世代にその歌声を知られることとなった、二階堂和美。

片や、在日ファンクでも活躍するトロンボーン奏者ジェントル久保田が指揮を執り、ビッグバンド・ジャズの楽しさを今の時代に蘇らせるべく2005年に結成した、ジェントル・フォレスト・ジャズ・バンド。

TAP the POPでも紹介してきた2組が合体し、〈二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band〉として初めてライブを行ったのが2016年1月。単なる「歌」と「バックバンド」の関係に収まらない爆発的なケミストリーを起こした相性の良さは一夜限りの共演ではもったいないと思っていたが、このたびアルバム『GOTTA-NI』という形に昇華した。

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「ビッグバンドって、9割方はしっかりと決めて、あとの1割でどう遊ぶかってぐらい、リハーサルの段階で全部ガチッと決めておかないと上手くいかないものなんです。それに〈歌とビッグバンド〉という形からもう一段階上ったところで何か生まれるかどうかが肝でもあって。ニカさん(二階堂)がどんな風にステージ上で立ち振る舞うのかは、実際に本番を迎えないとわからないところも多かったけど、ステージ上で一緒にやってみて、これは間違いないって確信しました」(ジェントル久保田)


二階堂はギターの弾き語りやバンド編成でライブをしている時でも、トロンボーンやバイオリンのように声色を変えたりしながら自由なスキャットを聞かせるが、それはまるで「うた」と「ことば」では表現しきれない何かが、身体じゅうからあふれ出てくるようでもある。

「バンドの音に身を委ねてると、なんだか音の数があればあるだけ、楽器ごとに身体中の関節が割り当てられて勝手に反応しちゃう(笑)。それに、ジェントル・フォレスト・ジャズ・バンド(以下、GFJB)と共演してみてあらためて気付いたのは、自分もバンドの音のひとつになりたいってずっと思ってたってこと。自分は本来ヴォーカリゼーションというか、楽器になりたかったんだよなっていうところに、ようやく立ち返れた気がするんです」(二階堂和美)


アルバムの冒頭を飾る新曲「Nica’s Band」は、二階堂の全身から湧き出るようなスキャットの魅力を存分に堪能できる1曲だ。


「この曲は『もしもキャブ・キャロウェイがニカさんだったら?』ってことしか考えてない(笑)。ニカさんってバラードの良さこそが真骨頂みたいなイメージがあるし、彼女の曲や歌詞も素晴らしいんだけど、この曲では心に沁みるような要素は一切省いて、ニカさんとバンドがドンパチやってるような感じで作りました」(久保田)

「自由に声色を使い分けても、それを受け入れてもらえるだけの演奏のパンチ力もあるし、楽曲自体もバリエーションに富んだ構成になってて。まさにこの1曲にアルバムのすべてが集約されていると言っていいぐらい」(二階堂)


このコラボのために誂えられた新曲2曲以外は、二階堂和美がこれまでに発表してきた曲をGFJBがビッグバンド・アレンジを施した。

「やってる曲はそれまでもずっと歌ってた曲ばかりだけど、やっぱり向き合い方が全然違う。今までやってきたどの編成より自分の内側に向いてるというか、舞台の上でセッションしてる感覚がすごく強いんです。音楽をめっちゃ楽しんでる私たちそのままを観て聴いてくれたら全部伝わるわ!っていう誇らしさも感じる」(二階堂)


笠置シヅ子からの影響をダイレクトに歌唱に反映させた楽しさあふれる「いてもたってもいられないわ」。ビッグバンド・サウンドのダイナミズムを十二分に活かした「とつとつアイラヴユー」。流麗なアレンジで原曲が持つエレガントな美しさをさらに引き出した「Lover’s Rock」。ビッグバンドという編成ならではの〈引き算の魅力〉で聴かせる「伝える花」……と、GFJBのメンバーたちの編曲による豊穣なセンスと小粋なユーモア、ジャズの先人たちへのリスペクトなどなどを投影させたサウンドが、既存のアレンジでは見えなかった楽曲の魅力にスポットを当てていく。

たとえば原曲ではサンバ調の楽曲だった「お別れの時」は、ファストテンポのジャズに生まれ変わった。


「私もサンバから離れてほしいと思ったし、当然そうなると思ってました。この曲にあのリズムを当ててくれた段階で、私が18歳の夏に聴いて大きな影響を受けたエラ・フィッツジェラルドの『Ella In Berlin』の最後に入ってる〈How High The Moon〉のように、チーチキ、チーチキっていう刻みの上でスウィングできる! 二階堂和美withGFJBは大正解だった!って確信しました。トランペットの村上基くんによるアレンジも、そこまで盛る?ってぐらいにいろいろ詰め込んでて。途中でジャングルっぽくになるところとか、どんどんひねりを加えてくる。それに原曲は人生のフィナーレを意識した大作だったのに、GFJBによるアレンジだと変に重くなく、さらりとしてる。今となっては、ジェントルとやらない時でもこのアレンジが頭に浮かんでるぐらい。全員がスウィングしまくって疾走するから、小気味いいんでしょうね」(二階堂)


アルバム『GOTTA-NI』のリリースを記念して、二階堂の地元である広島公演を含むツアーが開催。2017年1月には、1年ぶりの東京キネマ倶楽部ワンマンも決まっている。

「アルバムを録音したことで客観的に曲に向き合えるようになったし、ライヴの本数をこなしていくごとにバンドも本当に成熟してきていて。この22人の喜びが爆発したエネルギーを、生で一緒に体験してほしいです!」(二階堂)


二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band『GOTTA-NI』

二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band
『GOTTA-NI』

(カクバリズム/P-vine)


official website
http://kakubarhythm.com/special/nicawithgfjb/



二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band
〜新春ワンマンパーティー2017 THE 新年会〜

2017年1月22日(日)東京・鶯谷 東京キネマ倶楽部

詳細はofficial websiteを参照ください。


*本コラムは2016年12月1日に初回投稿されました。

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