TAP the SCENE

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ〜ルー・リードやマドンナを魅了したNYの音楽劇

2017.05.24

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映画俳優をやったり、ブロードウェイの舞台にも立ったけど、あんまりパッとしなくてね。脚本も幾つか書いてみたけど、どれも成功とは言えなかった……次第に自分の言葉で語りかけたい。書きたいという想いが強くなっていく中、「今度はロックンロールを舞台でやってみたい。ロックスターの物語を書きたい!」と思うようになったんだ。


ジョン・キャメロン・ミッチェルは自らのアイデアを知り合ったばかりのソングライター、スティーヴン・トラスクに話すと、二人はすぐに意気投合。スティーヴンが音楽監督を務めるNYのクラブ「スクイーズボックス」のパンクイベントで“初演”する。1994年のことだ。

それから数年の歳月を掛けてパフォーマンスを試行錯誤しながら、ジョンがストーリーと演技を、スティーヴンが作詞作曲に磨きをかけていく。こうして少しずつ“ヘドウィグ”の完成に近づけていった。

“ヘドウィグ”には僕自身のバイオグラフィーを反映させた部分もあるし、14歳の時にカンザスシティで会った女性をモデルにしている部分もある。テーマは古代ギリシアの哲学者プラトンの『饗宴』の中の「愛の起源」を借りたんだ。


その女性はドイツ軍人の夫と離婚してトレーラーハウスに住んでいた。ジョンは彼女と親しくなるうちに、洗練された見た目の裏にとても疲れた生活があることを知った。ジョンはそんな彼女を喜ばせようと歌やダンスを披露するようになるが、いつも見知らぬ男が突然やって来て退散せざるを得なかった。彼女は娼婦だったのだ。

こうして出来上がったジョン・キャメロン・ミッチェルとスティーヴン・トラスクによる『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(Hedwig and the Angry Inch)は、1997年にオフ・ブロードウェイの劇場「ウェストベス・シアター」に進出。翌年には続演のために専門劇場「ジェーン・ストリート・シアター」が作られ、2年半以上のロングラン・ヒットを記録。

ヘドウィグの髪型のかぶり物をしたヘドヘッド(Hedhead)と呼ばれる追っかけファンも登場。また、ルー・リードやデヴィッド・ボウイらが観劇し、マドンナが楽曲の権利使用を熱望したりと、アンダーグラウンド出身のセレブたちから絶大な支持を得ていく。ジョンはすっかり有名人となり、全米ネットのトーク番組に出演。ローリング・ストーン誌などでも特集記事が組まれるほど、ヒップな存在に躍り出た。

そして2001年。『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』がジョン・キャメロン・ミッチェル監督・主演で遂に映画化。ジョンが作り上げた「ポスト・パンク・ネオ・グラムロック・ミュージカル」は、同年のサンダンス映画祭で大絶賛。愛を追い求める無名のロックシンガー“ヘドウィグ”の数奇な半生は、世界中の観客を魅了した。

──全米各地のクラブを巡業するヘドウィグ率いる無名バンド、アングリーインチ。ヘドウィグ(ジョン・キャメロン・ミッチェル)は今夜も自らの人生を語り始める。

ベルリンの壁が築かれた1961年、東ドイツで男の子ハンセルは誕生。アメリカ軍のラジオ放送から流れるロックを子守唄に育った。やがて米兵と“結婚”して自由の国に移住するチャンスを得たハンセルはヘドウィグと名を変え、嫌々ながら“性転換手術”を行う。しかし、不手際で股間には“怒りの1インチ”だけが残されてしまう。米兵はヘドウィグの元を去って行った。

1989年の終わり。TVで母国のベルリンの壁が崩壊するのを見つめたヘドウィグは、夢を叶えるためにロックバンドを結成。アルバイトで何とか生計を立てていたある日、同じようにロックスターを夢見る17歳の少年トミーと出逢う。ヘドウィグがすべての愛情を注いだ後、トミーはヘドウィグのオリジナル曲すべてを盗んで人気ロックスターとなる。

以来、ヘドウィグはトミーの全米ツアーを追いながら、コンサート会場周辺の場末クラブを巡っているのだ。そしてヘドウィグの何かを探し求める旅に、大きな変化が起ころうとしていた……。

“やられっぱなし”のヘドウィグの人生を、苦悩と愛に満ちた人生ドラマとして観るか、それとも妖艶な音楽エンターテインメントとして楽しむか、それは観る側の自由。このコーナーで取り上げたことのある 『ロッキー・ホラー・ショー』『ベルベット・ゴールドマイン』『ロック・オブ・エイジズ』あたりが好きな人にはオススメだ。

予告編


パンクにメタルにバラードにカントリーと音楽性も多彩。みんなで歌えるロック・ミュージカル作品でもある。


『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』パンフレット

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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