1972年(昭和47年)8月25日、デヴィッド・ボウイの「スターマン」(ビクター)が日本で発売された。
同年の国内ヒットソングといえば…
1位「女のみち」/宮史郎とぴんからトリオ
2位「瀬戸の花嫁」/小柳ルミ子
3位「さよならをするために」/ビリーバンバン
札幌冬季オリンピック、ミュンヘンオリンピックが開催され、自動車に初心者マーク登場、東北自動車道が開通、そして連合赤軍によるあさま山荘事件がおこった年でもある。
さよなら 愛する人よ
薄暗くなっていて何時だか分らなかった
僕は寄りかかってラジオを聴いていた
あいつはロックンロールの魂を捨ててしまったよ、と彼は言った
すると大きな音は徐々に消えていって
波動に乗ってゆっくりとした声のように返ってきた
それはDJの声ではなく、宇宙からの微かなつぶやきだった
「この歌の中で彼(ジギー)は、地球を救うために降臨するこの超絶的な宇宙存在について語っているのだ。」
この「スターマン」は、デヴィッド・ボウイの5thアルバム『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars(ジギー・スターダスト)』に収録された楽曲である。
RCA(ビクター)のA&Rデニス・カッツがこの曲のデモを聴いて気に入り「これは偉大な作品になるだろう!」と強く勧めてシングルカットされることとなる。
歌詞にはジギー・スターダストがラジオから地球の若者たちへ希望のメッセージを伝える物語が描かれている。
デヴィッド・ボウイは1973年11月に『ローリング・ストーン』誌インタビューで、ジギーとスターマンについてこんなことを語っている。
「大いなる者たちが到来して世界は終わる。ブラックホールに飲み込まれるみたいにね。ジギーは夢の中で大いなる者たちからスターマンの到来を作曲するように忠告される。その曲は人々が耳にする希望のニュースなんだ。」
1972年7月6日、彼はマルチカラーのジャンプスーツに身を包み、異星人のようなメイクで相棒ミック・ロンソンとテレビカメラの前に登場した。
イギリスBBC放送の音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』の収録で「スターマン」を歌ったのだ。
サビに入ったあたりミック・ロンソンの肩に手を回し、挑発的な目つきでカメラに目線を送る。
ジギーになりきった彼は、この瞬間に“新時代のセックスシンボル”としての地位を不動のものにしたのだ。
500万人の視聴者が見守る中で、デヴィッド・ボウイとミック・ロンソンが仕掛けた同性愛的なパフォーマンスの衝撃はとてつもなく大きかった。
それは「服装の自由」「表現の自由」「肖像の自由」に対する訴えでもあった。
翌日、イギリスでは放送の話題でもちきりだったという。
「彼らは変人なのか?ホモなのか?」
退屈で窮屈で衰退しかけたイギリス郊外において、その日の放送は特別な意味を持つものとなった。
デヴィッド・ボウイは一夜にして圧倒的なカリスマ性をイギリス中に見せつけたのだ。
それはまさに“スターマン”が空から降りてきた夜だった。
その後、アルバム『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars(ジギー・スターダスト)』は750万枚を売り上げるヒット作となった…
スターマンがいる
空で待ってるのさ
僕たちに会いたがってるけど
刺激が強すぎないか心配してるんだ
スターマンが現れる
空で待ってるんだ
“台無しにするな”って彼が言う
彼はすべてのことには意義があると知ってるんだ
【佐々木モトアキ プロフィール】
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【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
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