数多の“卒業ソング”がある中、世代を超えて愛されつづけてきた歌がある。
今日は1975年に荒井由実(現・松任谷由実)が発表したアルバム『COBALT HOUR』の中に収録された名曲「卒業写真」にまつわるちょっと素敵なエピソードをご紹介します。
もともとは同時リリースされたハイ・ファイ・セットのデビューシングルとして書き下ろされたというこの楽曲。
聴き手の多くは自身の学生時代の恋愛の記憶と重ね合わせて聴いてきたことだろう。
だが、この曲の歌詞に登場する“あの人”とは異性の恋人や同級生ではなくユーミンが高校時代に通った美術教室の女教師だったという。
当時、高校生だったユーミンは東京芸大への進学を目指していた。
東京芸大といえば、芸術系では最高峰といわれている名門大学だ。
実家が呉服屋でもありった彼女は、ゆくゆくは着物のデザインなども手がけてみたいというのが夢だったという。
その頃の彼女は高校が終わると、美術教室に通って受験に備える日々を過ごしていた。
美術教室の先生は20代の女性。
その先生は名門大学を受験しようという彼女に対して、厳しく熱心な姿勢で指導してきたという。
「リンゴを描くんだったら、リンゴの裏側まで想像して描きなさい!表面だけじゃなく、空気も描くのよ!」
当時、その言葉の意味が理解できなかった彼女は「は~い」と軽い返事を返していた。
正直なところ、彼女にとって好きな先生ではなかった。
それでも、東京芸大という大きな目標のために彼女はこの教室で絵を描き続けていた。
「荒井さんいい? 描けなかったら自分のスタイルが見つかるまで描きなさい。画家の自叙伝なんかも読むといいわね。」
先生は彼女を芸大に入学させるために、ただただ一所懸命だったのだ。
そんな先生の気持ちを少しずつ理解するようになった彼女は、色んな画家たちの自叙伝や評論なども読むようになったという。
それは彼女の画力にもいい影響を与えていたという。
そんな日々の中で自信をつけた彼女は、いよいよ受験に臨む。
結果は…不合格。
公衆電話から涙声で先生に結果を知らせた彼女。
「とにかく今から来なさい。」
その日、先生は教室まで彼女を呼びだして、こんな言葉で励ましたという。
「来年も受ければいいじゃない。一緒に頑張りましょう!」
東京芸大クラスだと、2年や3年浪人して受験に臨む人も珍しくはない。
「はい、頑張ります!」
しかし、彼女の実家がそれを許さなかった。
結局、彼女は浪人受験を選択することなく…同時期に合格していた多摩美術大学へと進学する。
心機一転、大学生となり新生活を送る中、ある日彼女は街で美術教室の先生を見かける。
彼女は先生に声をかけることなく、思わず隠れてしまったという。
あの時に「はい、頑張ります!」と答えたのに、東京芸大をあきらめてしまった自分。さらには、せっかく美大へ進んだのに音楽にのめり込みはじめていた自分。
そんな後ろめたい気持ちでいっぱいだった。
そして大学1年生だった1972年の夏、村井邦彦(音楽プロデューサー/作曲家)の勧めでかまやつひろしのプロデュースのもと、サディスティック・ミカ・バンドに加入したばかりの高橋幸宏も参加したシングル「返事はいらない」で荒井由実としてアルファレコードからデビューを果たす。
しかし、当時そのシングルは300枚しか売れなかったという。
それでも彼女は曲を書き続けた。
この曲の2番の歌詞の中に出てくる“ゆれる柳の下”とは、当時彼女が頻繁に通っていたアルファスタジオへの道(田町海側)の風景なのだという。
「表面だけじゃなく裏側まで想像して描きなさい!描けなかったら自分のスタイルが見つかるまで描きなさい。」
あの時の先生の言葉が彼女の創作活動の力となったという。
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