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誰かにこっそり教えたいサム・フィリップス〜名プロデューサー、Tボーン・バーネットとの夫婦愛

2021.06.10

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♪「How to dream」/サム・フィリップス


私たちは惑星を見つめて星を追いかける
深い愛情に引き寄せられるように
私たちが目をあけて夢を見るとき
その瞳は開かれる


サム・フィリップスことレスリー・アン・フィリップスは、1962年1月28日にアメリカのカリフォルニア州グレンデールで生まれた水瓶座の女だ。
育ったのはバーバンクとパサディナに挟まれたグランデールという町。
“サム”というのは少女時代からのニックネームだった。
ティーンエイジャーの頃から作詞作曲を始め、シンガーソングライターとしての活動をスタートさせる。
そして21歳を迎えた1983年、本名の“レスリー・フィリップス”としてキリスト教系のレーベルから1stアルバム『Beyond Saturday Night』をリリースしてデビューを果たす。
その後、1984年には2ndアルバム『Dancing With Danger』、1985年には3rdアルバム『Black and White in a Grey World』と順調に発表し、そのどれもが20万枚を超える好セールスを記録する。
そして、25歳となった1987年に“転機”を意味する『The Turning』をリリースする。
この4thアルバムをプロデュースしたのが、今や米音楽界の巨匠といわれているTボーン・バーネット(当時39歳)だった。


1948年1月14日にミズーリ州で生まれたTボーンは、彼女より14歳年上の山羊座の男。
星占いで水瓶座と山羊座の相性を調べてみると…どちらも独りで生きていけるタイプで、お互いの強さに尊敬の念を抱くらしい。
また、多くの共通点を持っていて、お互いから学べることがたくさんある相性だという。
アルバムのタイトル通り、彼女は彼との出会いをきっかけに大きな転機を迎えることになる。

♪「River of Love」/レスリー・フィリップス


Tボーン・バーネットといえば、ボブ・ディランが1975〜1976年に行った歴史的ツアー“Rolling Thunder Revue”のギタリストに抜擢された男である。
その後は自身のバンド〜ソロ活動を経て、エルヴィス・コステロ、ロイ・オービソン、ウォールフラワーズ(ディランの息子ジェイコブのバンド)、ロバート・プラント&アリソン・クラウス、ロス・ロボス、エルトン・ジョン&レオン・ラッセル、トニー・ベネット、矢野顕子など世代や国籍を問わず数多くのアーティストを手掛けて、いくつかの作品をグラミー受賞へと導いたプロデューサーとして世界に名を轟かせている。

♪「Through The Morning Through The Night」/ロバート・プラント&アリソン・クラウス

カントリー、ブルースを中心としたルーツミュージックのピュアな魅力を、メジャーフィールドに送り込むTボーンの手腕は、幅広い層の音楽ファンの間で大いに信頼されている。
映画『ビッグ・リボウスキ』(1998年)の音楽監督を担当したことが話題となり、映画『オー!ブラザー』(2000年)のサウンドトラックを手掛けたときには、アルバムが全米で700万枚を超える売上げる大ヒットを記録し、2002年度のグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞するまでとなる。
その後、ジョニー・キャッシュの伝記映画『ウォーク・ザ・ライン(君につづく道)』(2005年)の音楽演出を手掛け、Critics’ Choice Movie Award(放送映画批評家協会賞)のサウンドトラック賞を受賞する。
記憶に新しいところでは、映画『クレイジー・ハート』(2009年)の主題歌「The Weary Kind」でアカデミー歌曲賞を受賞し、カントリーミュージックの素晴らしさをあらためて広く知らしめることに大きく貢献している。

♪「The Weary Kind」/ライアン・ビンガム

二人が出会った翌1988年、彼女は大手メジャーレーベルVirginに移籍し、幼少の時代の呼び名“サム”を取ってサム・フィリップス(Sam Phillips)としてアルバム『The Indescribable Wow(ある恋に捧ぐ)』をリリースし、再デビューをする。
そしてその翌年にはTボーンと結婚し、公私共に“良きパートナー”となるのだ。
その後、1994年にはニューズ・ウィーク誌から絶賛されたアルバム『Martinis and Bikinis』に収録された「Circle of Fire」がグラミー賞にノミネートされ、彼女はローリング・ストーン誌の最優秀女性アーティストに選ばれる。
34歳となった1996年にアルバム『Omnipop』を発表して、彼女は約5年間音楽活動をセーブする。
この頃、彼女はあるインタビューでこんな(夫想いの)発言をしていた。

「私は自分自身の話をするよりも、Tボーンの仕事の話をするほうがずっと好きなの…」

映画『ダイ・ハード3』(1995年)や『エンド・オブ・ヴァイオレンス』(1997年)といった作品にも出演し、女優としても活躍していた彼女だったが、実はこの間に妊娠〜出産〜子育てを経験していたのだ。
そして母親となった彼女は2001年にNonesuchへ移籍し、夫Tボーンと共にアルバム『Fan Dance』をリリースする。

「フォークミュージックっぽいとは思わないわ。静かな感じがするし、アコースティック楽器が多いからそんな印象を与えるのかしら。」

満を持して発表したそのアルバムは40分にも満たない短い作品だったが“静かな名作”として多くの音楽ファンに受け入れられた。


♪「Five Colors」/サム・フィリップス


日本ではあまり知られていないが、そのクールなルックスからは想像できない“話し好きの気のいい女性”として有名で、よくアメリカからアーティストが来日すると「Tボーン・バーネットの奥さんのサムがさぁ~」みたいな話題をすることが多々あるのだという。
インタビューの席で、サムの話題が受けないのを見て「えっ、どうして彼女のことを知らないの!?」と、アーティストが日米のギャップに驚くことがあるというのだ。
シンガーソングライター、女優、そして有能なプロデューサーを夫に持つ才女のことを多くのアメリカ人は知っているのに、日本人にはいまいち馴染みが薄い…そんな彼女は“誰かにこっそり教えたい”アーティストの典型なのだ。

【NPR Music Tiny Desk Concert】


【サム・フィリップス オフィシャルサイト】
http://samphillips.com

サム・フィリップス『Fan Dance』

サム・フィリップス『Fan Dance』

(2001/ Nonesuch)


【佐々木モトアキ公演スケジュール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12660299410.html


【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

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