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キティー・デイジー&ルイス──ルーツ音楽の影響をサウンドに込めてきた3人姉弟、原点回帰のアルバム

2018.01.15

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ヴィンテージなサウンドへのこだわりと、ルーツ・ミュージックへの愛情にあふれていながら、どこか現代的な軽やかさを感じさせる音楽──長女のデイジー、長男のルイス、次女のキティーによって結成されたバンドが、〈キティー・デイジー&ルイス〉だ。2008年、平均年齢17歳という若さでファースト・アルバムをリリース。デジタル時代に真っ向から楯突くように、自宅に8トラックのオープンリールやヴィンテージのマイクなど、アナログ機材を持ち込んでレコーディングしたサウンドは衝撃を与えた。

マスタリング・エンジニアとして活躍する父と、レインコーツの元メンバー(イングリッド・ウェイス)という経歴を持つ母を両親に持つ彼らは、ローティーンの頃から北ロンドンのパブでステージに立って腕を磨いてきたという。ギター、バンジョー、ラップスティール、ピアノ、オルガン、ウッドベース、ドラム、ハーモニカ、トロンボーンなどなど、3人はさまざまな楽器をこなすマルチプレイヤーであり、ステージ上では曲ごとにパートを目まぐるしく入れ替えながら演奏していく。そんな芸人気質にあふれるエンターテインメント性と、パンキッシュなカッコよさを併せ持ったようなパフォーマンスは評判となり、G.ラブ、ユアン・マクレガーなど、多くのアーティストたちが彼らに熱いラブコールを寄せている。中でも、コールドプレイのクリス・マーティンはキティー・デイジー&ルイスに惚れ込み、2008年の北米ツアーでオープニングアクトに抜擢したほどだ。

2015年にリリースされた『The Third』では、かねてから彼らのファンであることを公言していた元クラッシュのミック・ジョーンズがプロデュースを担当。ブルース、スウィング、ラグタイム、リズム&ブルース、ロカビリー、スカ……と、これまでに培ったヴィンテージなサウンドへのこだわりはそのままに、表現の幅をさらに推し広げた。その後も、アラバキロックフェスやフジロックへの出演や、EGO-WRAPPIN’との対バン・ツアーなど来日ライブも数回にわたって展開し、素晴らしいステージングで日本のオーディエンスも虜にしてきた。

約2年10ヶ月ぶりとなるニュー・アルバム『Superscope』は、作詞作曲からレコーディング、エンジニアリングまでのすべてをキティー・デイジー&ルイスの3人で手がける、原点回帰的な制作方法が採られた。またサウンドも、ロックンロールの衝動をストレートに反映された作風を中心に置きながらも、ファンクやソウルの腰のすわったグルーヴを感じさせる楽曲など新たな側面も窺わせる。しかし、ここ数年のムーヴメントであるレトロ・ソウルとは一線を画すような、どこかささくれ立ったパンキッシュなアティデュードを感じさせるあたりが彼らの真骨頂といったところだろう。

ルーツ・ミュージックからの影響を自由に咀嚼して生まれる、キティー・デイジー&ルイスの音楽は、遠い過去にロマンを馳せながら、今の時代に鳴るべき音を確実に響かせている。


キティー・デイジー&ルイス『Superscope』

キティー・デイジー&ルイス
『Superscope』

(Sunday Best / Beat Records)


Kitty, Daisy & Lewis official website
http://www.kittydaisyandlewis.com/


Kitty, Daisy & Lewis Japan Tour 2018
2018年1月22・23日(月・火)東京・渋谷 CLUB QUATTRO
2018年1月25日(木)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
2018年1月26日(金)大阪・梅田 CLUB QUATTRO
詳細・問い合わせは SMASH website にて確認ください。


*本コラムは2015年1月26日に初回公開された記事に、加筆修正を施したものです。

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