「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the NEXT

YOUR SONG IS GOOD──20周年を迎えたライブバンドが生み出す、タイムレスに心地よいサウンド

2019.03.26

Pocket
LINEで送る

 結成20周年という節目を迎えた、YOUR SONG IS GOOD。彼らが歩んできた20年は、その時々で自分たちの中に生まれた音楽的好奇心を余すことなく拾い上げ、育み、誰も表現したことがなかったバンド・サウンドを追究していった、飽くなき冒険の歴史だ。先ごろリリースされたニュー・アルバム『Sessions』は、デビューから現在までの時の流れを自由に行き来しながら、強烈に最新型のYOUR SONG IS GOODを感じさせる、興味深い作品だ。

 FRUITYのメンバーだったサイトウ“JxJx”ジュン(オルガン、ボーカル)と、NUTS & MILKで活動していたヨシザワ“MAURICE”マサトモ(ギター)、シライシ“JICHO”コウジ(ギター)、タナカ“ZEERAY”レイジ(ドラム)らによる前身バンド=SCHOOL JACKETSが結成。ソウルやロックステディを聴いてシビれたポイントだけを抽出しては、ファストコアのマナーで十数秒の短い尺に凝縮するような音楽を展開していた。

 その前身バンドが発展する形で誕生したのが、YOUR SONG IS GOODだった。その後、ハットリ“SHORTY”ヤスヒコ(トロンボーン)、タカダ“DAATAKA”ヒロユキ(ベース)が加わって現在のメンバーが揃うと、2002年にカクバリズムから7インチシングルと、ミニ・アルバムを発表。ジャマイカ音楽、ソウル/ファンク、カリブ音楽など、様々なルーツ・ミュージックや、ハードコア・パンク、ヒップホップまでを呑み込んだそのサウンドは、元来のホームであったライブハウスはもとより、クラブ・シーンからも大きな支持を集めていく。

 2004年10月発表の1stフル・アルバム『YOUR SONG IS GOOD』を筆頭に、コンスタントにアルバムをリリースしてきた彼ら。ときにトロピカルなパーティ・バンドとしての真髄をみせたかと思えば、パンキッシュな衝動に振り切ってみせたり、さらにはメンバーそれぞれの雑多な嗜好をプリミティブなままに詰め込んでみたりと、作品を発表するごとに、その時々に感じる自分たちの“旬”を刻み込んできた。

 2013年11月リリースのアルバム『OUT』を前後して、パーカッションに松井泉がサポートとして参加。彼らの持ち味であったトロピカルなエッセンスに、バンマスのサイトウ“JxJx”ジュンがDJとしてプレイしていく中で傾倒してきた、ハウスやダブなどダンス・ミュージックからの影響を濃密に投入しながら、既存のバンド・サウンドをスクラップ&ビルドしていく。そうして、彼らしか作りえない独自のダンス・ミュージックの形を切り拓いていった。現在はサックス&フルート奏者の後関好宏もサポートに加わったことで、バンド・サウンドの表現域はディープな広がりをみせながら、さらなる進化を遂げている。

 そんなYOUR SONG IS GOODの20周年記念盤として制作されたのが、ニュー・アルバム『SESSIONS』だ。20年に及ぶ活動で生まれた数々の楽曲から厳選した10曲を、現在の8人編成でリアレンジ。スタジオ・ライブさながらにアルバム全曲を1日でレコーディングしたそのサウンドは、ライブバンドならではの生々しい躍動感にあふれていながら、繊細で緻密な表現もしっかりとすくい上げていく、絶妙なバランスが新鮮だ。「Super Soul Meetin’」や「Nettai Boy(熱帯ボーイ)」といった、熱くるしいほどの勢いに満ちたライブ・パフォーマンスが印象的だった初期曲は、四つ打ちのダンス・ミュージックを経由した現在のアレンジによって、新たな魅力が引き出されている。また、「Mood Mood」「Double Sider」「On」といった近年の楽曲は、元々がダンス・ミュージック的な発想から作られたものだだったが、ライブで演奏されていくうちにバンドのテイストが注入されていく。

 過去と現在が歩み寄ることで生まれた、他のどこにもない、タイムレスに心地よいサウンド。YOUR SONG IS GOODは、いつだって「今」が一番面白い。

YOUR SONG IS GOOD『Sessions』

YOUR SONG IS GOOD
『Sessions』

(カクバリズム)





“SOFT LANDING” – 20th Anniversary Oneman Live Show at 日比谷野外大音楽堂 –
2019年4月21日(日)東京・日比谷野外大音楽堂



other live schedule
SLOW DAYS
2019年4月14日(日)大阪・服部緑地野外音楽堂(w/UA、シャムキャッツ、D.A.N.、CHAI、中村佳穂BAND、Yogee New Waves)

2019年5月11日(土)台湾・台北 THE WAL(w/雷擎 l8ching)

GREENROOM FESTIVAL’19
2019年5月26日(日)神奈川・横浜赤レンガ地区野外特設会場(w/トム・ミシュ、コリーヌ・ベイリー・レイ、トミー・ゲレロ、Chara、EGO-WRAPPIN’ 他)


Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the NEXT]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ