メンバー全員、岡本太郎が好きということで、ラモーンズのように全員が同じ姓、オカモトを名乗るOKAMOTO’Sは、中学校の同級生4人で結成されたバンドだ。
2009年のデビュー当時は突出した演奏力と迫力あるパフォーマンス、さらに10代の若さで1960~70年代を思わせるような古いロックンロールを鳴らすことで話題を呼び、2010年には日本男子としては最年少の若さで、アメリカのフェス『SXSW2010』に出演を果たす。
「マダラ」(2010 Live)
ヴォーカルのオカモトショウ(以下ショウ)と、ドラムのオカモトレイジ(以下レイジ)は、ミュージシャンの父親を持っている。
レイジは子供の頃からテレビのバラエティ番組に出演したり、またベースのハマ・オカモトは、ダウンタウンの浜田雅功の長男ということもあり、コマーシャル的な話題性を備えたバンドでもある。
そして今年2019年にデビュー10周年を迎え、6月には武道館単独公演も成功させた。彼ら自身ビッグヒットがないことを焦った時期もあったというが、10年の間にメンバーそれぞれの活動の幅も増え、着実にキャリアを積んできたと言える。
主にショウと、ギターのオカモトコウキ(以下コウキ)が、OKAMOTO’Sの楽曲の大半を手がけるが、デビューからしばらくの間は、こんな風になりたいという憧れや、ステージに上がるために自分に鎧を着けるみたいな曲ばかりを書いていたと、ショウは語っている。
英語ができるという理由でフロントマンに“させられた”と語るショウだが、英語と日本語を巧みに使って、ここ数年はリアルな今の自分自身を歌で表現するようになった。
2019年1月にリリースされた、通算8枚目となる彼らのオリジナル・アルバム『BOY』は、そんな28歳の彼らの少年と大人の間にあるリアルが描かれた作品だ。
アルバムジャケットには、メンバー全員の子供の頃の写真がコラージュされている。
アルバムのトップを飾る「Dreaming Man」は、生々しい彼らのリアルな声をストレートなロックンロールで伝える曲だ。
「自分たちにはヒット曲がない」という悲しみも含めて、「今の人が何かを作ってもムーブメントなんて起こらないし、俺たちがやっていることが認められる日なんて来ない。ただ、俺たちが俺たちでわかってやるしかないんだ」ということを歌いたくて。
(CINRA.netインタビューより、ショウ)
この「Dreaming Man」と、ラストに収録されている「Dancing Boy」とで、アルバムは「Boy」と「Man」を行き来する構成となっている。
「『BOY』じゃなきゃいけねえな」っていう感覚もありますしね。背伸びして、かっこつけて、世間知らずな感じって、ロックをやるうえで絶対に必要なものだと思うので。どう足掻いたって、Ramonesを聴いて「かっけえ!」と思う感覚は一生消えないと思うんですよ。だから、いくつになっても「BOY」は「BOY」だけど、現実的には「BOY」ではなくなっていく……っていう。
(CINRA.netインタビューより、レイジ)
最近、Suchmosやnever young beach、Yogee New Wavesなど、OKAMOTO’Sの彼らと同世代のバンドが多く活躍している。
彼らと共通する世代感覚と積み上げてきた10年のキャリアによって、肩の力が抜けてより自然体になり、そして自信をつけて、今では同世代の中では最も安定感のあるバンドになったと言えるだろう。
少年から大人へ、今彼らはバンドとして最も充実した時期を迎えているのではないだろうか。
「Dancing Boy」のMVでは、今活躍する同世代の総勢150名を超える仲間のポートレイトが次々に映し出される。平成生まれの彼らが令和の時代に、日本のユースカルチャーをこれからも引っ張って行くだろうという予感と、その中にしっかりとOKAMOTO’Sが存在しているということを伝える優れた映像だ。
楽曲もU2を感じさせるような広がりのある音が、希望を感じさせる。
また他にもアルバムには、ヒップホップ界の人脈と多く関わってきたレイジのカラーが強く感じられる「Higher」や「ART(FCO2811)」、都会的なポップ・センスが光るコウキによる「偶然」なども色を添える。
4人それぞれの違った音楽性がうまく融合して、幅広い音楽性を表しつつ、OKAMOTO’Sの音楽になり得ているところが、10年というキャリアのなせる技だろう。
「BOY」と「MAN」、若さと成熟、そのバランスが絶妙と言える、今のOKAMOTO’Sの『BOY』なのだ。
OKAMOTO’S オフィシャルサイト
CINRA.netインタビュー