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50歳を迎えたBjörk (ビョーク)の輝きと、アイスランド自然保護へのメッセージ

2015.11.21

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11月21日は“アイスランドの歌姫”として異才を放ちつづける Björk (ビョーク)の誕生日です。
1965年、アイスランドの首都レイキャヴィークで生まれた彼女は今年で50歳を迎える。
2000年に公開された映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で、日本でもその名が知られるようになる。
彼女が生まれ育ったアイスランドは、北海道と四国を合わせた程度の島国で、人口が約25万人に対して羊の頭数が100万頭以上という羊大国としても知られている。
そこは北極圏に近いグリーンランド海に位置する島で、1年のうち半分は太陽が昇らず氷に閉ざされ、火山活動が盛んな“厳しくも豊かな自然環境”で知られる国だ。
ヒッピームーブメントに影響を受けた母のもとで、彼女は4歳の頃から作曲を始め、7歳から地元の音楽学校に通いフルートやピアノ、クラシックを学んだという。
ちなみに母と実父は彼女が1歳の時に離婚しており、母の再婚相手はギタリストだった。

●アイスランド国営放送で放送されたクリスマス向けの番組に出演した11歳当時の(貴重な!)ビョークの映像


1977年、彼女は若干12歳にしてアルバム『Björk Guðmundsdóttir』で歌手デビューを果たし、母国アイスランドで7,000枚を売り上げを記録する。
これは日本の人口に換算すると約400万枚にもなる大ヒットで、ビョークは一躍トップアーティストへの階段を駆け上る。


その後ロンドンから起こったパンクの洗礼を受け、幾つかのパンクバンドで活動した後、1986年にThe Sugarcubes(ザ・シュガーキューブス)を結成する。
1988年、同バンドでリリースしたアルバム『Life’s Too Good』が欧米でヒットを記録する。
1993年にバンドを解散し、彼女は本格的にソロ活動をスタートさせる。
同年にソロ名義でリリースしたアルバム『Debut』で本格的なデビューを果たし、イギリスなどのヨーロッパ圏を中心に大ヒットを記録する。
テクノ、ハウス、ジャズ、ロック、ポップス…あらゆるジャンルを超越しながら、その個性的な「ファッション」「歌唱法」「表現力」で音楽シーンに新たな価値観を築き上げてゆく。
彼女の無垢で純粋な性格は、時折エキセントリックな行動として現れることもあり…あの映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』撮影時には監督と意見を対立させ、自分が嫌いな衣装をビリビリに引き裂いた上、撮影現場から2ヶ月間も失踪したこともあるという。
そうした感情の振り幅の大きさを「作品」や「パフォーマンス」として昇華できるのがビョークというアーティストの魅力であり、だからこそ彼女の歌と演技は観る者・触れる者の胸を打ち、カンヌ国際映画祭のパルムドールでも最優秀女優賞を受賞したのだろう。

そんな彼女が、今年の春に新作アルバム『Vulnicura』(2015)を発表した。
そこに収録されている内容は、前夫マシュー・バーニー(アメリカの現代美術家)との壮絶な別離をモチーフにしたもので、その新作を引っ提げて歌うステージがあまりにも辛かったため、彼女は春からスタートしたツアーの後半のスケジュールをすべて中止にしている。
ツアーの中止について、この夏、彼女はこんなコメントを発表している。

「このアルバムを歌うということは本当に神経が擦り切れるような体験でしたし、ほかの作品と較べてわたしの身体の記憶や時間間隔も違うのです。今回この先の公演を中止にしたことも、わたしの人智を超えたこの作品の性格によるものなのです。これまで頑張ってやってきたツアーの功徳がちゃんと反映されてみんなに許されるといいなと願っています。わたしは新しい楽曲を書き始めていて、もうこの猛々しい野獣(アルバム)については野に放って好きにさせて、新しい道を行くのが自然な成り行きとして一番いいのではないかと思っています。」



母国アイスランドの自然を愛する彼女は、自身の言葉で世界中の人々にこう訴えかけている。

「アイスランドは今ではヨーロッパ最大の手つかずの自然を有した国です。政府は中央高地帯にダムと発電所を50か所建設するといっていて、これを来年から始めようとしています。これを始めたらわずか数年でアイスランドの原野は姿を消してしまうかもしれません。わたしたちは中央高地帯を国立公園として指定する運動を始めようと提案しています。アンケート調査などではすでにアイスランド人の大半が国立公園化案に賛成していることが証明されています。政府に抵抗しているわたしたちの活動に世界中のみなさんからの支持や応援をお願いしたいです。」




【ユニバーサルミュージックジャパンの公式サイト】
http://www.universal-music.co.jp/bjork/







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