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2トーンって何? スカとロックを融合させた先にあるものとは

2017.02.23

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スカとロックを融合させた音楽、2トーン。
その由来は1979年に設立されたレーベル、2トーン・レコードからきている。
スペシャルズの他、マッドネスやザ・セレクターといったバンドがこのレーベルからデビューを果たし、1980年頃のイギリスで一大旋風を巻き起こした。


■イギリスとジャマイカのただならぬ関係□

スカは1950年代にジャマイカで誕生した音楽で、ジャズに裏打ちのリズムを取り入れたようなサウンドが特徴だ。
イギリスでも1960年代中頃にモッズと呼ばれる若者たちを中心にして流行したのだが、なぜ海を超えて遠く離れたイギリスでスカが広まったのだろうか?

ジャマイカがイギリスに占領され、植民地となったのは17世紀頃。それから長らくイギリスによる支配が続き、ようやく独立を果たしたのは1962年のことだ。
そうした時代背景もあって、イギリスでは多くのジャマイカ系移民が暮らしており、独立後も新しい生活を夢見て多くのジャマイカ人が移り住んできた。

その中にはジミー・クリフやリコ・ロドリゲスといった、ジャマイカを代表するミュージシャンたちの名もあり、彼らによってスカやレゲエといったジャマイカの音楽がイギリスに持ち込まれるのだった。
中でもキング・オブ・スカと呼ばれるプリンス・バスターはモッズたちから熱烈な支持を集め、コンサートやツアーで移動するときにはバイク軍団の護衛がつくほどだったという。



■2トーン・レコード誕生とその思い□

時は流れて1970年代後半。
イギリスではパンクが全盛期を迎えており、次々と新しいバンドが誕生していた。
スペシャルズの前進バンド、オートマティックスもそんなバンドの1つだったが、他のバンドと違ったのは、メンバー6人の内2人がジャマイカ系移民の人種混合バンドだったということだ。

やがてスペシャルズに改名し、スカとロックを合わせたノリのいい音楽で徐々に支持を集めていった彼らは、1979年に自らのレーベル、2トーン・レコードから「ギャングスターズ」でデビューを果たす。
レーベルを設立したスペシャルズのジェリー・ダマーズは、2トーンという言葉の意味とレーベルのコンセプトについて、このように説明している。

「英国の、新しく一つになった音楽なんだ。白人がロックを演奏し、黒人は自分たちの音楽を演奏するんじゃなくてね。『俺たちの音楽』は、白と黒という二つの音楽の統合なんだ」


イギリスでは長年に渡って不況が続き、労働者階級の若者たちは怒りと不満を抱えていた。その矛先はときに労働力としてやってきた移民に向けられ、人種差別を助長するという結果をもたらしていた。
各地で暴動が頻発してイギリスは混迷の中にあったが、そんな状況においてジェリーが必要だと考えたのが、白人も黒人も一緒になって踊ることができる音楽だった。



■2トーンのシンボル、ウォルト・ジャブスコ□

ジェリーは2トーン・レコードを設立する際に、ウォルト・ジャブスコというマスコットを制作する。
スキンヘッズと呼ばれるイギリスの若者と、ジャマイカのスラングで不良を意味するルード・ボーイを掛け合わせたこのキャラクターは、白人と黒人の親和のシンボルとなった。(ジェリーはウェイラーズのピーター・トッシュを、ルード・ボーイのモデルにしたという)

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ウォルト・ジャブスコというアイデアは、そのままスペシャルズのファッションにも反映された。
メンバーの1人であるネヴィル・ステイプルによれば、彼らは古着屋を回って時代遅れとなっていた衣装を集めたという。

「それまで、こういうスーツや装飾品を身に付けているのは、老人だけだったんだ。それを俺たちが変えたのさ。半分はもうどこでも作られていないようなものだったよ。
俺たちは、黒人と白人をごちゃ混ぜにした服装を生み出した」


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音楽とファッション、そして精神で時代に1つの変革をもたらした2トーン・レコード。だが、1981年にスペシャルズが解散、分裂するとその勢いにも陰りが見えはじめる。そして設立から7年後の1986年にレーベル業から撤退、短い歴史に幕が降ろされるのだった。

しかし、アメリカでは2トーンのフォロワーとして知られるノー・ダウトが登場したり、日本ではネオスカという新たなシーンが形成されるなど、その後の世界各地の音楽シーンに影響を与えている。
2トーン・レコードの音楽は、今なお多くの人たちを惹きつけてやまない。


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参考文献:
『2トーン・ストーリー―スペシャルズ―炎に包まれたポスト・パンク・ジェネレーション』デイヴ・トンプソン著/中島英述訳(シンコーミュージック・エンタテイメント)


『ベスト・オブ・2トーン』
Warner

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