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季節(いま)の歌

Summer〜宮崎アニメや北野映画の音楽を手掛けてきた男が紡いだ“夏の名曲”

2020.07.30

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宮崎駿監督作品において『風の谷のナウシカ』(1984年公開)以来、『風立ちぬ』(2013年公開)に至る29年間すべての長編アニメーション映画の音楽を手掛けてきた作曲家、久石譲。
また、北野武監督作品でも『あの夏、いちばん静かな海。』(1991年公開)から『Dolls』(2002年公開)に至る7作品の音楽を手掛けたことでも知られている。
そんな彼の作品の中から、夏の名曲「Summer」をご紹介します。


この曲は、1999年に公開された北野武監督作品『菊次郎の夏』のメインテーマとして創作されたという。
夏休み…ひとりぼっちの少年が、遠く離れて暮らしているという母親に会うために、お小遣いを持って家を飛び出す。
それを知って心配した近所のおばさん(岸本加世子)が、自分の旦那でチンピラ中年、菊次郎(ビートたけし)を少年に同行させて東京から愛知県豊橋市の母親のもとへと旅をさせる…そんな少年と不良中年の“ふたり旅”が描かれた映画だった。


北野は音楽を依頼する際、いつもは「自分の専門じゃないから」と音楽担当の久石に任せ、まず出来上がってきたデモ音源を聴いた後に変更等の注文をつけることが多いが、本作では映画製作前に「リリカルなピアノものでいきたい」と、具体的なイメージをリクエストしたという。
北野映画のプロデューサーの森昌行は、こんな回想コメントを残している。

「彼が曲のイメージを具体的に示すのは珍しく、余程のこだわりがあったのでしょう。」

久石は発奮して「すごい曲を創るぞ!」ということで、さっそく創作にとりかかった。
候補作がいくつか出来上がっていく中、最後に力を抜いてピアノに向かって紡いだのがこの「Summer」だったという。
北野に曲を届けたときに「こんなものもありますが…」と最後に聴かせたところ、「これ、いいじゃない!」ということで採用が決定。
秀逸なロードムービーとも言えるこの映画は大ヒットし、カンヌ国際映画祭のパルムドールにノミネートされるなど、世界的な評価も高い作品となった。
また、2000年から2002年にかけて北野が出演したトヨタカローラのCM曲としても使われ、多くの人が一度は耳にしたことのある“夏の名曲”となった。

──夏といえば海やプールでの水遊びはもちろんのこと、人によっては田舎の田園風景であったり、子供の頃に兄弟や友人とスイカを食べた場面を思い出したり、音楽好きなら開放的な野外フェスなどを浮かべる人もいるだろう。
約6分半のこの名曲には、誰しもが持つ様々な夏の記憶が詰め込まれている…


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