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スター誕生〜70年代型ロックスターの愛と別れを描くバーブラ・ストライサンド主演作

2017.08.23

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「ロックスター」という生き様からは、様々なイメージを思い浮かべることができる。セックス、ドラッグ、アルコール、派手なファッション、長髪、田舎の大豪邸、高級車、専用ジェット、ホテル暮らし、プールサイドパーティ、モデルの女たち、グルーピー、スキャンダル、トラブル、海外逃亡、警察との衝突、逮捕劇、裁判沙汰……。

これらはあのキース・リチャーズが60年代後半から70年代を通じて作り上げた世界と言ってもいいが、特にレコード産業が好況に沸いた1970年代後半のアメリカでは多くのロックスターたちがそのイメージを実践していた。

人気があるうちはいい。だが落ち目になった途端、イメージの世界から抜け出せない気まぐれなままのロックスターはどうしようもない駄目人間になっていく。『スター誕生』(A Star Is Born/1976)は、70年代型ロックスターの人生最終章とスターダムの序章を迎えたばかりの女性歌手、二人の愛と別れを描いた傑作だった。

ジュディ・ガーランドで有名な『スタア誕生』の4度目のリメイク作で、それまでの映画界からロック界へと舞台を変えた初めての作品。主演はカントリー・ミュージシャンや俳優として人気の絶頂にあったクリス・クリストファーソンと、同じく歌手や女優としてスーパースターのキャリアを築いていたバーブラ・ストライサンド。

バーブラやクリスが歌う映画のサウンドトラックは全米1位に。ポール・ウィリアムス、レオン・ラッセル、ケニー・ロギンス、ルパート・ホルムズらがソングライティングに協力。収録された「Evergreen」は大ヒットした。

物語は長い人気を誇るロックスター、ジョン・ノーマン・ハワード(クリス)のツアーから始まる。しかし、トラブル続きの言動でブレーンたちはうんざり気味。ここ数年はヒット曲にも恵まれず、売り上げや人気も下降していた。ある夜、たまたま覗いた場末のクラブでエスター・ホフマン(バーブラ)という無名歌手と出逢う。

彼女の非凡な歌声、容姿に一目惚れしたジョンは、次の日のスタジアムコンサートへエスターを同行させる。ステージにバイクに乗って現れて転落するジョン。怪我で病院送りとなったジョンを遠目に、エスターは一人残されたまま虚しさを味わう。

ツアーもキャンセルとなり、訴訟や税金などの面倒に巻き込まれていくジョンは、エスターと思わぬ場所で再会。二人は燃えるように愛し合う。穏やかな日々もあって人間らしさを取り戻したジョンは、エスターとレコードを吹き込む。あるコンサートでは突然エスターを観衆に紹介。ためらっていたエスターだったが、歌い終えると大歓声。こうして彼女は一夜にしてスターとなった。

二人の結婚生活も始まった。束の間の夢のようなハネムーンを経て、スター街道を上っていくエスター。一方、落ち目のジョンはブレーンたちに煙たがられて再びアルコールに溺れていく。二人の立場はすっかり逆転してしまった。

やがて二人の関係にも溝が生じるが、どんなに駄目なジョンでも受け入れる決意をしたエスターは、もう一度愛の力で繋がろうする。ジョンも心の底から彼女を愛していた。眠りにつくエスターにそっとキスをしたジョンは、車に乗り込むと猛スピードで荒野を駆け抜けていく。そして、死という悲しみの中でステージに立つエスター。歌声は次第に力強く舞い上がっていく……。

映画のハイライトは、ジョンがステージでバイクを乗り回すスタジアムのコンサートだろう。フェニックスにあるアリゾナ州立大学のスタジアムで10時間に渡って撮影。わざわざこのシーンのためだけに、ドゥービー・ブラザーズやサンタナらが出演するスペシャルコンサートを開いたというから驚きだ。しかも3ドル75セントの低料金だった。結果、6万人もの大観衆が集まった。

今観ると『スター誕生』は、ロックスターにまだロマンがあった時代の「大人のためのお伽話」なのかもしれない。

クリス・クリストファーソン扮するロックスターのジョン


ジョンとの出逢いでスターとなっていくバーブラ・ストライサンド扮するエスター

予告編

『スター誕生』

『スター誕生』


*日本公開時チラシ

*参考/『スター誕生』パンフレット

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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