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「TAP the COLOR」連載第98回
緑は、人の心を新生させる力を持つ。カリフォルニアの夢と終わりなき夏を綴ったビーチ・ボーイズ。自らの心の深い暗闇と向き合ったジョン・レノン。バビロンシステムと闘ったピーター・トッシュ。静寂の大自然の中で身を清めたジャスティン・ヴァーノン。誰もが緑の中にいた。
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ビーチ・ボーイズ『Endless Summer』(1974)
60年代後半以降、そのバンド名も災いして激動の時代に見合わずに人気低迷していた彼らだったが、ベスト盤の本作は再評価につながり、全米1位を獲得。選曲はバンドの要、ブライアン・ウィルソンが“芸術的メランコリー”に走る前の1962〜65年を中心とした“夏のサウンドトラック”。サーフィン、車、女の子、海、ビーチ、太陽の陽射し、青い空といった風景が流れる。わずか4年で誰もが知っているヒット曲の量には驚く。まさに『終わりなき夏』だった。
(こちちお読みください)
ラブ&マーシー 終わらないメロディー〜ビーチ・ボーイズとブライアン・ウィルソンの物語
ジョン・レノン『John Lennon/Plastic Ono Band』(1970)
説明不要の歴史的名盤。邦題『ジョンの魂』が現しているように、孤独な魂を解放する歌の数々が聴く者の左胸を鼓動させる。心理学者アーサー・ヤノフのプライマル・スクリーム療法によって、ジョンは自らの心の深い暗闇と向き合った結果、「Mother」「Love」といった歌世界を生む。ビートルズという夢が終わり、力強い言葉とシンプルな音楽でジョンの70年代が始まった。
ピーター・トッシュ『Legalize It』(1976)
ウェイラーズによって世界にレゲエが放たれた後、ボブ・マーリィと別れたピーター・トッシュ。ボブが引き続き外へ外へとその存在と思考を向けていく一方、ピーターはジャマイカ国内の搾取社会(バビロンシステム)と闘っていく。本作は初のソロ作であり、大麻畑の中でガンジャを一服する姿からは、一つの確固たるメッセージが聴こえてくる。「草を合法化しろ!」と歌った「Legalize It」は、Billboardのベスト・マリファナ・ソングに選ばれた。
(こちらもお読みください)
ハーダー・ゼイ・カム〜持つべき権利のために搾取体制と闘う姿を描いたレゲエ映画の名作
ボン・イヴェール『Bon Iver, Bon Iver』(2011)
ジャケットの画のように、雪解けし始めた冬の夢が聴こえてくる美しい作品。ジャスティン・ヴァーノンは愛を失い、都会での生活やバンド活動に嫌気が差し、冬の大自然に身を置くことを決意。それまでのしがらみや葛藤などを静寂の時間と空気の中で清めた結果、ボン・イヴェールとして生まれ変わった。本作はその2枚目で、現在進行形の新しいフォーク・ミュージックを極めた名盤。
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