★ダウンロード/ストリーミング時代の色彩別アルバムガイド
「TAP the COLOR」連載第114回
人気バンドのメンバーでいることは素敵なことかもしれない。だがその一方で、ヒットチャートやステージでのショーに囚われの身となっている自分に、疲労を感じたり嫌気がさすこともあるかもしれない。ソロ活動とは、自己表現の取り戻しや自分の居場所探しのようなものだ。
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デニス・ウィルソン『Pacific Ocean Blue』(1977)
ビーチ・ボーイズのウィルソン三兄弟の次男坊であり、メンバーの中で唯一サーファーだったデニスの最初で最後のソロアルバム。海を愛した男のロマンティシズムが全編に漂う。晴れた日よりも曇空で今にも雨が降り出しそうな、海辺の風景の中で聴きたい作品。デニスは1983年12月28日に死去。享年39。
フィル・コリンズ『Hello, I Must Be Going!』(1982)
この頃のフィルはジェネシスとソロ活動を並行させ始めたばかりで、来るべき「世界で一番忙しい男」を予感していたことだろう。MTVという時代を象徴するメディアも味方につけ、ソロ2枚目となる本作ではポップで軽快なダンディズムを披露。モータウンの名曲「恋はあせらず」がスマッシュヒット。
デニス・デ・ヤング『Desert Moon』(1984)
メインストリーム・ロックのベクトルが確実にヘヴィメタルを指したことが分かった1980年代半ば。それまでの主役だったいわゆる「産業ロック」バンドの看板ヴォーカリストたちは挙ってソロ活動を開始。スティクスからは84年にデニス・デ・ヤングとトミー・ショウがソロアルバムをリリース。今聴くと強烈に80年代を感じさせる、うっとりとする魅力を放つ。
ピーター・セテラ『Solitude/Solitaire』(1986)
先日、R&Rの殿堂入り(今更!?)を果たしたシカゴ。1980年代前半にバラード路線で復活して以降、しばらくはその方向性で時代を乗り切るもやがて失速。本作はピーター・セテラがシカゴ脱退後に発表したソロ作。2曲のナンバーワン・ヒット(映画の主題歌とエイミー・グラントとのデュエット曲)を収録。こちらも強烈な「あの頃の空気や風景」を思い出させてくれる。
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