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「TAP the COLOR」連載第174回
ブルース(正確にはブルーズ)を聴いたり目の前の演奏に接したりすることは、言うまでもなく一つの体験であると同時に、それは時と場所を巡る旅でもある。スタート地点はミシシッピ川、綿花畑、ハイウェイ61……といったところだろうか。長い旅路では様々な人生、苦悩、歓喜といった風景を見ることになる。旅人たちはそれを決して忘れることはできない。
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『Blues Masters:Very Best of T-Bone Walker』
すべてのエレクトリック・ギターのブルーズはこの男から始まった。「モダン・ブルーズ・ギターの父」と称されるTボーン・ウォーカーの登場だ。本盤は1945〜57年の録音集。全編に渡って流れる洗練された都会的な響き。甘い声。泥臭いだけがブルーズじゃない。パフォーマンスも衝撃的だったエンターテイナー。「Call It Stormy Monday」を収録。
『Sufferin Mind』
ニューオーリンズが育んださすらいのブルーズマンがギター・スリム。100フィートのシールドを使ってライヴ会場を練り歩き、時には外にまで出てしまう。歪んだギターで表現されるフレーズの数々。エンターテイナーであると同時に、独特のサウンドを作るために酒と女の狭間で研究しまくったであろうアーティスト気質。実に奥が深い人だ。本盤は全盛期の1953〜55年の録音集。代表曲「The Things That I Used to Do」を収録。
『The Sky Is Crying:The History of Elmore James』
オープンDチューニングにして豪快なスライドで3連符を鳴らすギター・スタイル、いわゆるブルーム調で伝説になったエルモア・ジェイムス。そこにねっとりと粘着力のある独特のヴォーカルが絡みつく。一度聴いたら忘れられなくなるブルーズは、あのロバート・ジョンソンから教わったもの。本盤は彼の足跡を収録した数あるアンソロジー盤の一つ。1951〜1961年の録音を中心とした全21曲。オープニングは初録音ヒットした「Dust My Broom」。
『Mississippi Fred Mcdowell』
農夫としてミシシッピ州の北部に暮らしていたフレッド・マクダウェルが民俗学者アラン・ロマックスによって“発見”されたのが1950年代後半。50歳代半ばにして初録音。1962年に録音された本盤は「ワン・コード、ワン・グルーヴの魔術師」「ヒル・カントリー・ブルーズの総元締め」の生々しい魅力が詰まった名作。迫力が凄い。ボニー・レイットやローリング・ストーンズへの影響も大きい。
*参考/『ブルースCDガイド・ブック2.0』(小出斉著/ブルース・インターアクションズ)
(『THE BLUES』シリーズはこちらでお読みください)
『フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』(Feel Like Going Home/マーティン・スコセッシ監督)
『ソウル・オブ・マン』(The Soul Of A Man/ヴィム・ヴェンダーズ監督)
『ロード・トゥ・メンフィス』(The Road To Memphis/リチャード・ピアース監督)
『デビルズ・ファイヤー』(Warming By The Devil’s Fire/チャールズ・バーネット監督)
『ゴッドファーザー&サン』(The Godfathers And Sons/マーク・レヴィン監督)
『レッド、ホワイト&ブルース』(Red, White & Blues/マイク・フィギス監督)
『ピアノ・ブルース』(Piano Blues/クリント・イーストウッド監督)
【執筆者の紹介】
■中野充浩のプロフィール
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