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「TAP the COLOR」連載第294回〜BLACK〜
1990年代以降、ビルボードのアルバムチャートは売り上げに基づいた集計方法に変わった。さらにゼロ年代に入るとネット配信が普及してCDやアルバムが売れなくなった。その影響もあって現在のチャートはほぼ毎週のようにナンバーワンが入れ替わり、すぐにトップ10圏外へランクダウンしてしまう(その代わりに年に数枚だけビッグヒットが生まれる)。だが70〜80年代はナンバーワンになること自体が困難で、言い換えればそれらは「時代のサウンドトラック」として確かに機能していた。10月にはどんなアルバムがナンバーワンになったのだろう?
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ガンズ・アンド・ローゼズ『Appetite for Destruction』(1987)
1987年7月にリリースされた、ガンズ伝説のデビュー作。ツェッペリンの『Ⅳ』やAC/DCの『Back In Black』と並ぶハードロック屈指のベストセラー。また、N.W.Aのようなギャングスタラップと共に当時の“LAのリアル”を伝えてくれた衝撃作でもあった。オリジナルジャケット(下)は過激なために問題となり、差し替えられた。チャート初登場は182位。そこから1年がかりで1988年8月にナンバーワン到達(5週1位)。トップ争いはHR/HM勢の独壇場で、1988年はまずヴァン・ヘイレンから始まり、そしてデフ・レパードとガンズが入れ替わりを繰り返し、最後にボン・ジョヴィが絡むという結果に。なお、ガンズの本作は翌年にも首位に立った。今聴いても痺れるサウンドだ。
キッド・ロック『Rock n Roll Jesus』(2007)
先月に自身のキャリアを振り返るベスト盤をリリースしたばかりのキッド・ロック。1990年代末にラップメタルとリンクして大ブレイク。次第にサザンロックやカントリー色を強める。良質な音楽遺産をテイストに「アメリカ合衆国の今の音」を作るのが非常に巧いアーティスト。エミネムの友人でもあり同郷のデトロイト出身。もちろん、大御所ボブ・シーガーにも繋がる。本作(1週1位)は彼の最高傑作との評価が高く、ZZトップのようなハイウェイ用のドライブ・ミュージックの気持ち良さ。ヒットした「All Summer Long」などを収録。
ガース・ブルックス『The Chase』(1992)
今回改めてセールス記録を調べてみたが、やはりガースの90年代は凄まじかった。1989年のデビュー作『Garth Brooks』(1000万枚)、90年の『No Fences』(1700万枚)、91年の『Ropin’ the Wind』(1400万枚)、92年の本作(7週1位)は900万枚、93年の『In Pieces』(800万枚)、94年のベスト盤(1000万枚)、95年の『Fresh Horses』(700万枚)、97年の『Sevens』(1000万枚)、98年の2枚組ライヴ盤(2100万枚)……いくらCDが売れた時代とはいえ、これはもう群を抜いた領域。全米で1億枚以上のアルバムセールスを誇るのは、ガース以外にビートルズ、エルヴィス、ツェッペリン、イーグルスの5組のみ。そんなカントリー界のスーパースターもデビュー前は、ナッシュヴィルであらゆるレーベルから断られ続けていたというから驚きだ。
ソランジュ『A Seat at the Table』(2016)
ソランジュ・ノウルズ。あのビヨンセの妹として知られる。だが音楽性は異なり、姉の活躍は関係なく自身で鍛錬を積んだアーティストである。2003年にデビュー。特にヒットもないまま時が過ぎるが、3枚目の本作(1週1位)でチャート的に成功。音楽的にも高い評価を受けた。
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