「フロムミー トゥーユー」
キッスのボーカル、ポール・スタンレーはそう言うと、「上を向いて歩こう」を歌い出した。
2013年10月、結成40周年を迎えた7年ぶりとなる来日公演でのことだ。
40年前の1973年にデビューしたキッスは、顔を白く塗るメイクや火を吹くパフォーマンスなど、他のバンドとは一線を画したライブで人気を博す。
だが、ライブが好評のわりにはレコードの売上は今ひとつだった。
きっかけはデトロイトで自分たちの曲が流行っているという噂だった。
それを知ったKISSは他のライブをキャンセルし、急遽デトロイトで単独ライブを催す。
その日の演奏が1975年に『ALIVE!』(地獄の狂獣 キッス・ライヴ)として発売されるとこれが大ヒット、KISSにプラチナ・ディスクをもたらし一躍トップ・アーティストの仲間入りを果たした。
1977年に初来日して以来、何度も日本でライブをしているキッスだが、2013年の来日には特別な想いがあった。
というのも、2年前に予定されていた来日が、東日本大震災によって中止となってしまったからだ。
キッスはオフィシャルサイトに「JAPAN NEEDS US!」というメッセージを掲載し、募金を呼びかけた。
それから2年を経てようやく実現した念願の来日公演。
ポールが日本語で「上を向いて歩こう」を歌うのは恒例のファン・サービスだったが、このときのポール・スタンレーはいつもより長く2番まで歌った。
ただのサービスではない、震災で傷ついた日本への想いが込められているのかもしれない。