「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the NEXT

チャラン・ポ・ランタン──結成10周年イヤー突入の人気姉妹ユニットがたどり着いた「最高」傑作

2019.04.30

Pocket
LINEで送る

誰も興味なさそな曲を
今日も爆音で流すわ
ああ最高
誰にも合わない
私だけの最高

誰に何を言われようが
私は私
なにをしようが
私の自由
それが
最高


姉・小春(アコーディオン)と妹・もも(唄)の二人による姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタン。昨年11月にはNHKホールで結成10周年突入を記念した特別公演を開催。過去最大の大舞台をものともしない、とてつもなく素晴らしい演奏とパフォーマンスを繰り広げ、アニバーサリーイヤーの幕開けを華々しく飾った。

最近では妹のももが、斎藤工主演の映画『麻雀放浪記2020』(白石和彌監督)のヒロインに抜擢されたりと、活動の幅をさらに広げているチャラン・ポ・ランタンが、1年4ヶ月ぶり5作目となるオリジナル・アルバム『ドロン・ド・ロンド』を発表した。

ももの一人語りによる「overture」でアンニュイにはじまったかと思いきや、いきなり激しいドラムソロとファンファーレが鳴り響くジプシー・パンク「脱走」で幕を開け、そこから怒涛のチャランポ・ワールドへと一気に突入する。「カストラート」「ガリレオ」と、彼女たちにしか作り出せない、吉夢も悪夢も入り混じったようなファンタジーな世界が、卓越した演奏力で鮮やかに描かれていく。


ももが出演した映画のテーマであった“麻雀”をお題にしたファンク「麻イイ雀」、ダブ的な音響処理が施された「春のあお」、マイナースイング調の「100人のダディ」、派遣会社のCMソングとしてつくられた「ポジティブヒーロー」の直後に、街を行く恋人同士のアツアツぶりに呪詛を吐きまくる「お惚気カップル」と、小春の奔放なソングライティング・センスは今回もフルスロットルで、なんとも痛快。


アルバム中盤に収録の「日が昇るまで」は、フジロックへの出演を機に日本でも注目を集めるようになった、スウェーデン出身のジプシー・パンク・バンド〈レーヴェン(Räfven)〉との共作曲。お互いのライブに飛び入りするなど、世代や国は違えど音楽性で共鳴し合う両者のコラボは必聴だ。


2トーン・スカの大御所バンドにまつわる物語をテーマにしたほろ苦いスカ・チューン「マッドネス」、小春のルーツの一つであろうクレヅマーの有名曲「ALE BRIDER」と続く本作は、ラスト曲「最高」でクライマックスを迎える。

アコーディオンという日本ではプレイヤーの数が多いとは言えない楽器を奏で、シャンソンやクレヅマー、ジプシー音楽やポルカといった今の時代では亜流と呼ばれるような音楽からの影響を、自らの音楽表現に取り入れていった小春。身近にいた歌の上手い妹と一緒にチャラン・ポ・ランタンとしての活動をはじめた以降も、アートワークはもちろん、メイクも洋服も含めた表現のすべてにおいて妥協を許さずに美意識を貫き、「私だけの最高」に向かって突き進んできた彼女たち。その揺るぎない信念を高らかに歌い奏でたこの曲、そして新作アルバムは、まさにチャラン・ポ・ランタンの「最高」を記録している。

チャラン・ポ・ランタン『ドロン・ド・ロンド』

チャラン・ポ・ランタン
『ドロン・ド・ロンド』

(avex)



チャラン・ポ・ランタン ライブハウスツアー2019「脱走」
5月5日(日)香川・高松DIME
5月6日(月)広島・広島クラブクアトロ
5月11日(土)石川・金沢AZ
5月12日(日)新潟・GOLDEN PIGS REDSTAGE
5月19日(日)静岡・浜松・窓枠
5月25日(土)福島・郡山CLUB #9
5月26日(日)宮城・仙台darwin
6月1日(土)岡山・岡山・YEBISU YA PRO
6月2日(日)京都・京都・磔磔
6月8日(土)北海道・PENNY LANE 24
6月9日(日)北海道 PENNY LANE 24
6月16日(日)愛知・DIAMOND HALL
6月22日(土)福岡・DRUM LOGOS
6月23日(日)熊本 B.9 V1

チャラン・ポ・ランタン ライブハウスツアー2019追加公演「脱走の果て」supported by テンプスタッフ
6月29日(土)大阪・大阪NHKホール
7月7日(日)東京・人見記念講堂

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the NEXT]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ