夏が終わると、別れの季節だ。
この季節の別れ歌は、「こちらは望んではいないのに」別れが訪れる、というパターンが多いのだが、今回紹介するポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」は、恋人と別れたいと願う男の歌だ。
主人公の男は、悩みを解決するために、心理療法士のところを訪れる。そこで彼を待っていたのは、女医だ。
歌は、彼女の言葉から始まる。
♪「問題はただあなたの頭の中に存在するだけなの」と彼女は言った。
「論理的に考えれば、答は簡単だわ。
自由になりたいと必死なあなたをお救いしましょう。
恋人と別れる方法なら、50は見つかるでしょう」♪
そしてふざけた言葉遊びが始まる。スタンには、新しいプランを立てろと言い、ガスには、バスに飛び乗れと言い、リーには、キーを捨ててしまえ、という感じだ。
この女医のふざけた返答について、ポールの弟、エディー・サイモンは次のように話している。「この曲を作った頃、兄のポールは、息子に韻の踏み方を教えていたんですよ」
シリアスな短編小説のように始まった歌の間に挟まれる、童謡のようなコーラス。その背後でリズムを刻んでいるのは、ドラムの名手、スティーヴ・ガッドだ。そしてこの歌は、またポール独特の物語世界へと引き戻される。
♪「ふたりで今夜、寝ながらこの問題を考えてみたらどうかしら」と彼女は言った。
「明日の朝にはきっと明かりが見えていると思うの」
そして彼女は僕にキスをし、僕はおそらく彼女が正しいのだろうと悟ったのだ。
恋人と別れる方法は50ある
恋人と別れる方法は50あると♪
韻の踏み方を息子に教えたポールは、恋人と別れる方法についても教えたのだろうか。それにしても、単なる妄想ソングが、彼の手にかかると立派なブンガクになってしまうから不思議である。
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