♪ テイク・イット・イージー
気楽にいこう
自分の車輪の音で
いらつくもんじゃない
まだできると思っても
手加減するのさ
理解しようとなどせず
ただ君の居場所を見つければいい
そして、テイク・イット・イージーさ ♪
1970年にドン・ヘンリーと出会ったグレン・フライは、リンダ・ロンシュタットのバックをつとめたことをきっかけにイーグルスを結成する。そして彼が選んだ居場所が、エコー・パークだった。
エコー・パークはロサンジェルス北東部の丘陵地で、北側のダウンタウン、南側のハリウッドにはさまれている。
この街がどこか、時の流れが停まったかのように思えるのは、古着屋が多かったり、自動車より自転車が幅をきかせているせいだろう。
今でも、若き日のグレン・フライがコーヒー・ショップから姿を現しそうな気がしてくるのだ。
グレン・フライが住んでいたアパートの階下からは、いつもギターの音と歌声が聞こえてきた。彼はイーグルスとしてのファースト・アルバムの準備にとりかかっているところだった。
少しの間、ギターの音が聞こえなくなると、どうしたのだろうかと、思いを馳せた。そして、久しぶりにまた、ギターの音と歌声が階下から聞こえてきた。
「いい曲だね」
階下の男は、グレンの言葉に微笑み、自分の名前はジャクソン・ブラウンで今、ファースト・アルバムのために曲を書いているところなのだと言った。
「ちょっと、聞いてくれるかい?」
ジャクソン・ブラウンは書き掛けの「テイク・イット・イージー」を歌い始めた。曲作りに煮詰まって、アリゾナへの小旅行へ出かけて思いついた曲だった。そして歌が2番にさしかかったときのことだ。
♪ そう、俺はアリゾナ州ウィンズローの
街角に立っている
なんて光景だ ♪
「フラット・ベッド(平台)のフォードに乗った女の子が、僕のことを見ようと、スピードを落としたのさ」
グレンが突然、ジャクソン・ブラウンの歌に歌詞を載せたのだ。
歌の主人公とフォードのトラックに乗った女の子が出会ったように、ジャクソン・ブラウンとグレン・フライが出会った瞬間だった。
「君にこの歌、任せるよ」と、ジャクソン・ブラウンは言った。
「パッケージはできていて、僕はただリボンを飾っただけさ」
グレン・フライはそう語っているが、仕上がった曲がイーグルスにとって大切な曲であることは疑いの余地がなかった。
「テイク・イット・イージー」は、イーグルスのデビュー・アルバムの1曲目に収録され、1枚目のシングルとしてカットされることになる。
「僕らは、ここから始まったのさ」
ライブ・アルバムも発売されている1994年の「ヘル・フリーゼズ・オーバー・ツアー」で、グレン・フライは「テイク・イット・イージー」を歌い出す前にそうメッセージしている。
テイク・イット・イージー。
その言葉には、「じゃあな」という別れの意味もある。
テイク・イット・イージー、グレン・フライ。
だが、エコー・パークには今でもあなたの面影が残り、アリゾナ州ウィンズローにできた「街角に立って公園」には、あなたの歌声を聞きながら、多くのファンたちが集まってくるのだ。
<追記>
グレン・フライが亡くなった翌日、ジャクソン・ブラウンは自身のコンサートで「テイク・イット・イージー」を捧げている。
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