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僕は今、列車の駅に座っています
目的地までの切符も買いました mmm
一夜限りのツアーの途中
スーツケースとギターを手にした
詩人とワンマンバンドのために
どこの場所もそれなりの用意をしてくれています
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ポール・サイモンが「詩人とワンマンバンド」のツアーをしていたのは、1965年のことです。サイモン&ガーファンクルのデビュー・アルバムの失敗に気落ちしたポールは、ひとりイギリスに渡りました。そう、この歌は、イギリス国内での、ポール・サイモンのソロ・ツアーの途中に書かれたものでした。
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家路
家へ帰れるのなら、と思うのです
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順調に進んでいたツアーの途中で何故、家が恋しくなったのでしょう。それは列車が途中で止まってしまったからです。
イギリス北部の町、ウィガンでのライブを終え、当時暮らしていたブレントウッドに向かう旅の途中、列車はリヴァプール駅に止まったまま、動こうとしなかったのです。
ポール・サイモンは1990年、雑誌「ソング・トーク」で次のように語っています。
「あの曲は旅の途中、リヴァプールで書いたものです。あの曲のいいところは、リヴァプールの駅や街やクラブなど、僕の22歳の頃の思い出が詰まっているところです。昔々のスナップショット、写真のように」
若き日々。
風が吹き、川が流れるように、次々と言葉が編まれ、メロディーが紡ぎ出される日々。歌詞は、次のように続きます。
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家
僕の思考が外套を脱ぎ
家
僕の好きな音楽が流れ
家
彼女が静かに横たわり
僕を待っていてくれる場所
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夢のような安らぎの場所。
果たして、ロンドンからさほど遠くないブレントウッドにあったポールの家は、そんな家だったのでしょうか。
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今夜また、僕は歌うでしょう
歌うフリをするゲームをするのです
でも僕の言葉はすべて
月並みな影となって
自分に跳ね返ってきます
ハーモニーにも間が必要なように
僕は誰か癒してくれる人が必要なのです
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ブレントウッドの家が夢の場所ではなかったのは確かなようです。
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家路
家へ帰れるのなら、と思うのです
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ブレントウッド。
それはイギリスの地名であると同時に、ニューヨークのロングアイランド鉄道の駅名でもあります。
家。
その言葉にポールは、アメリカの故郷を重ね合わせていたのでしょう。
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家
僕の思考が外套を脱ぎ
家
僕の好きな音楽が流れ
家
彼女が静かに横たわり
僕を待っていてくれる
静かに待っていてくれる場所
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