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ヘルプ!
誰かが必要なんだ
ヘルプ!
誰でもいいってわけじゃない
ヘルプ!
誰かが必要なんだよ
助けてくれ!
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ビートルズにとって2作目の映画となる『4人はアイドル』の主題歌であり、10枚目のシングルにもなった「ヘルプ!」は、そんな悲痛な叫び声から始まる。
何故、ジョンは叫んだのか。
歌詞は次のように続く。
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僕がまだ若かった頃
今日よりずっとずっと若かった頃
どんな時だって
僕は誰かの助けを求めたことはなかった
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状況は突然、変わるわけではない。
だが、主人公は自らが絶望的な孤独の中にいることに、ある日、突然、気づくのである。
ジョンが「ヘルプ!」を歌ったアルバム『4人はアイドル』の中で、ポールは「イエスタデイ」を歌っている。ちなみに、「ヘルプ!」と「イエスタデイ」の2曲だけが<ひとつの単語による曲タイトル>なのだが、「イエスタデイ」の中でも、ポールは突然の孤独を歌っている。
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イエスタデイ
悩みなどはるか彼方と思えたが
今や苦はここにいついたのか
ああ、まだ昨日という日を信じている
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ポールが歌った孤独は、彼女が去っていってしまったことによる寂しさである。
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何故、彼女は行ってしまったのか
僕にはわからないし
彼女もそのわけは言わなかった
僕が何かいけないことを言ったのだ
昨日という日が恋しい
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「イエスタデイ」の歌詞はロマンティックで感傷的に響く。そして何より、歌の主人公はまだ「昨日」という思い出の中を生きているのである。
それに対して、「ヘルプ」の主人公は、昨日という大陸から流された船に乗せられた漂流者のようだ。
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今や僕の人生はいろいろな面で変わり
僕という存在は
靄の中に消えたのだ
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ここでは、「インディペンデンス」という言葉を「僕という存在」と訳した。
少年時代。ひとは「家」や「親」や「地域」に守られながら、「自分という存在」を確立している。
だが、大人になる、ということは、そんな確か、と思われたものから旅立つことなのである。
インディペンデンス=自立することとは、ひとりで立つことであり、何物にも頼らないことだが、それはそう簡単なことではない。
普通、大人になるということは、新たに「会社」やその他に帰属することで、新たなる安定を求めることに過ぎない。
この「ヘルプ!」が発表された1965年。ビートルズは人気の頂点にいた。翌1966年にはツアーで歌うことをやめてしまう彼らだが、ジョンはこの当時を振り返って次のように語っている。
「暴飲暴食を繰り返し、豚のように太っていく自分自身に失望していたのさ」
太ってしまったエルヴィスのように、ともジョンは話している。
そんな日々が、彼の「自立」を邪魔し、彼を孤独に追いやったのだろう。
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できるなら
助けてくれよ
落ち込んでるのさ
近くにいてくれるなら
感謝するよ
この僕をまた
大地に立たせてほしいのさ
頼むから
お願いだから
助けてくれよ
ヘルプ・ミー!
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そばにいて欲しい。
孤独と絶望の中にあっても、ジョンの願いはささやかである。だが「そばにいてくれる」ことは、難破船で漂流する彼にとって、命綱だったに違いないのである。
昨日という思い出を歌ったポールと、今日という孤独を歌ったジョン。
ビートルズが大人になる瞬間である。