「親父とは話ができなかった。親父の方も俺に口を開こうとしなかったし、母親も親父に話しかけることはなかった」
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1981年、2枚組アルバム「ザ・リバー」を発表した翌年、ブルースはステージの上でそう語り始めた。
「だから俺は、大きくなって自立できるようになった時は嬉しかった。それから10年ほど、家族とはほとんど会わなかった。そしてつい最近、ヨーロッパ・ツアーから戻ってきて実家に電話を入れたら、数日前に親父が入院したと聞かされたんだ」
少年時代。ブルースと父親の間には、いつも険悪な雰囲気が漂っていた。日々汗を流し、家族を養うために黙々と働く男。そんな父親にとって、髪を肩まで伸ばし、音楽に熱中するブルースは、許しがたい存在に映っていたのだろう。
ブルースがミュージシャンとして生活するようになると、コンサート会場にはよくブルースの母親の姿が見受けられたし、彼女は多くのファン同様に、ステージ上の若者に熱狂していたが、そこに彼の父親の姿があることはなかった。
俺はカリフォルニアに向かった。親父が入院してる病院だ。その道中、俺はずっと考えていた。
ずっとずっと彼に話したいと思っていても言えなかったこと、そしていつの日にか、ふたりで座って、俺が子供の頃、どうしてそうなってしまったのか、どうして親父はそんなふうに感じていたのか、って話し合う時が来るんじゃないかと思っていたこと。
だが、時が過ぎても、そんなことは起こらなかった。それはあまりに危険な話題だったってことなのだろう。でも今、親父は今病気で、もう年だ。俺は思ったのさ。親父に話せるのは、今しかないって」
そしてブルースは、「ザ・リバー」に収録されている「インディペンデンス・デイ」を歌い出したのである。
♪
パパ、もう寝ろよ
時間も遅い
俺たちが話しても
何が変わるってわけじゃない
明日の朝になれば
俺はセント・メリーズ・ゲートから旅立つから
♪
若き日のブルースを振り返るような歌詞で、その歌は始まる。
♪
さよなら、と言ってくれよ
独立記念日なんだ
♪
ブルースと父親の確執。その背景には、ブルースと土地の、ブルースと時代の確執があった。父親が汗水流して働けば、家庭は幸福になり、その幸福の総体がアメリカなのだ、という「アメリカの夢」の上には、すっかり分厚い雲が覆っていたのである。
♪
この家の暗闇に俺たちはつかまった
この街の暗闇にも俺たちはつかまっちまった
でも、もうこの俺には触らせない
あんたにだって、触らせない
奴らがあんたにしたようには
この俺には、させないのさ
♪
アメリカの夢、アメリカの道徳を生きてきたはずの父親は、英雄ではなかった。土地に、時代に苛め抜かれているように、若き日のブルースには見えたのだろう。だから、そこから「独立」しなければいけないのだ。
♪
今じゃフランキー・ポイントの部屋はがら空きさ
ハイウェイもブリーカーズ・ポイントまで砂漠のようだ
そして多くの連中がこの街を去っていく
友達や家を後にして
夜になるとひとり
暗く、埃だらけのハイウェイを歩いていくのさ
♪
だが、家を出ていこうとするブルースは最後に、優しい眼差しを父親に向けるのである。
♪
だから、さよなら、と言ってくれよ
パパ、今になって俺は
あんたが言いたくても言えなかったことが
わかるのさ
でも今はただ、さよなら、と言ってくれよ
あんたが言いたかったこと
俺は絶対に忘れたりしないと誓うから
♪
家を出たブルースは、暗闇を作り出す本体、社会に目を向けることになるのだ。


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