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“ロックの裏面”を衝撃的な写真とともに綴った『ロックンロール・バビロン』

2016.02.27

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ロックンロールが産声を上げてから60年以上が経つ。そしてその歴史上、最も眩い輝きと底知れぬ力を放っていたのが1960年代と70年代であることは今さら誰も否定できない事実だろう。あの奇跡的な復権があった90年代は別として、ゼロ年代以降「ロックンロール」という響きはもはや若い世代とすっかりシンクロしなくなってしまった。

ティーンエイジャーが台頭してダンス・スタイルの一つとなった50年代の「ロックンロール」が60年代に「ポップミュージック」へと変わり、やがて後半には反体制と結びついて「ロック」と呼ばれるようになり、70年代に凄まじい勢いで皮肉にも巨大産業化していく道程は、これまで数多くの“ロックの教科書”のページで触れられてきた通りだ。その間、名曲・名盤・名演・ロングセラーが生まれては、若者たちの心や言動に影響を与え続けた。これは言ってみれば“表面”だ。

対して“裏面”とは、ロックの象徴である愛と平和と自由、アウトロー精神と並走するように、若者たちを導くはずのロックンロール貴族たちによるドラッグ、酒、セックス、パーティ、金、事故、事件、死といったところだろうか。富と名声を手に入れる代わりに訪れることになる、スポットライト・楽屋・リムジン・ホテルだけでの暮らしから生まれる出来事。

ゲイリー・ハーマン著の『ロックンロール・バビロン』は、そうした“ロックの裏面”を綴った貴重な書物で1982年に出版された(翻訳版は1988年)。若くしてスターになった者たちの悲しき代償、スター・システムの中の悲劇の風景、孤独の先にある暗闇が語られる。だが決してスキャンダルや暴露本の類ではなく、しっかりとした批判や分析が込められており、“ロックの教科書”以上に学ぶべきことは多い。

「創造する」「表現する」ミューシジャンやシンガーたちと、彼らを擁護・管理して「投資する」「ビジネスにする」エージェントや音楽業界の関係性。ロックを「支持する」若者たちとロックを「伝達する」メディアとの関係性も、本書の大きなテーマの一つ。全11章立てで様々な側面から本質に迫っていく。

特筆すべきは衝撃的な写真の数々(掲載順)。
美女に囲まれるエルヴィス・プレスリー
棺桶のハンク・ウィリアムス
注射器を腕に刺すシド・ヴィシャス
日本の警察に連行されるポール・マッカートニー
キスするデヴィッド・ボウイとルー・リード
股間に手を入れるイギー・ポップ
取り調べを受けるレイ・チャールズ
バディ・ホリーやリッチー・ヴァレンスが乗った飛行機の墜落現場
湖から引き揚げられるオーティス・レディングの遺体
全裸のキース・ムーン
唇を縫ったロッド・スチュワート
アクロバットするパティ・スミス
宝石だけを身につけて抱き合うミック・ジャガーとジュリー・ホール(この本の表紙)
病室で昏睡状態のマリアンヌ・フェイスフル
バニーガール時代のデボラ・ハリー
オルタモントの悲劇
袋詰めにされたジョン・レノンの遺体
十字架にはりつけされたジョニー・ロットンなど

(本書の構成と主な内容)
★第1章「約束の地」
1967年周辺について
★第2章「ティーンエイジ・ヘブンに不時着」
50年代R&R時代の喧騒
★第3章「セックスとドラッグとロックンロール」
ロックとクスリ
★第4章「理由なき反抗者たち」
グラマラス・デイズ
★第5章「黒人たちの受難」
ソウルやレゲエのスターたち
★第6章「ツアー病」
スターたちの移動
★第7章「悲しきグルーピー」
スターの女たち
★第8章「ファン・ダンシング」
ロックに踊らされる人々
★第9章「光に目がくらんで」
ロックと宗教
★第10章「だましのビジネス」
ロックと金
★第11章「見せかけの見出し」
ロックとマスコミ

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